3.11とエネルギー政策 --- 宇佐美 典也

アゴラ

東日本大震災から4年たつ。

あの時津波に呑まれる人や街の姿をみて、原発事故の危機を見て、「苦しくともサラリーマンをやめて人生自分の道を歩いていこう」と思ったわけで、自分にとって本当に人生の転機だったのだが、そんなことをは私以外の人にとって興味が無いことであろうのでこの辺にしておく。3.11の前後で最も変わり、多くの日本人に影響を与えることになったのは日本のエネルギー安全保障政策だったわけで、ごく簡単にその変遷を書いておく。

①原発が全部停止した

②必然的に火力発電がフル稼働することになり天然ガス始め資源輸入が激増することになった

 ★天然ガス輸入額(2010年;400億万ドル ➡ 2013年:720億ドル)

③結果として原発が稼働しなくても電力供給は賄うことができた。

④しかしながら電力会社の採算が悪化して、電気料金が上昇し始める

 ★東電の電気料金(2010年度:20.37円/kwh ➡ 2013年度:24.33円/kwh)

⑤再生可能エネルギーの固定価格買取制度始まる。

⑥高価な買い取り価格もあり太陽光発電バブルが起きるが系統受け入れの限界を迎える。

⑦太陽光発電以外の再生可能エネルギーは固定価格買取制度導入後もなかなか普及せず。電源構成に大きな変化は無し。

 ★大型水力除く再エネの電源比率(2011年度:1.4% ➡ 2013年度:2.2%)


経産省HPより)

 

こんなところだろうか。総じてこの4年で証明されたのは

○原発が稼働しなくても火力発電をフル稼働すれば電力の供給自体は賄える。

○ただし当然電力料金は上がる。

○固定価格制度を導入しようとも再生可能エネルギーには原発を代替する力は無い(少なくとも現状は)

というごくごく当たり前のことだった。

国内のぐちゃぐちゃを除いてグローバルな視点でみれば日本は「原発を止めて火力をフル稼働させた」ということ以外何でもないわけなのだが、そろそろポスト京都議定書の議論が本格化するのでこうした構造をこれ以上続けるわけにはいかなくなる。地球温暖化対策の国際交渉は戦前で言うところの軍縮条約交渉と近い政治的な性質を持つので「地球温暖化なぞ妄言。無視すれば良い。」という理屈はいくらなんでも通らない。

そんなわけで、日本はそろそろ原発に向き合う必要がある。単純化すれば「脱原発で電力料金上昇&ポスト京都議定書から離脱」か「原発再稼働して、ポスト京都議定書参加」かの2択なのだが、それだと「正義の論争」となって千日手に入るので、お互い罵りあるのではなく妥協・折衷案を作っていくことが大事になるのではなかろうか。

いずれにしろあれから4年経ったのだから、そろそろ時計は前に進めなければいけないと思う。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2015年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。