24日にラトビアで開催されたユーロ圏財務相会議。主題はギリシャ問題であります。そして、その会議の結末はギリシャにとって悲惨といってもよい結果となりました。この流れで行くと5月11日、12日頃がギリシャ問題の大きな節目となりそうな状況であります。
4月末までに同国の詳細な財務改革案の承認を得ることが支援の融資であり、今回の財務相会議ではギリシャ側を代表してバルファキス財務大臣がそのプレゼンテーションをしたわけですが、「ギリシャとのコミュニケーションが完全に機能しなくなった会合だった」(マルタの財務大臣)とコメントしているように参加財務大臣らの怒りを買う一方の会議となってしまいました。
ところが当のバルファキス大臣は「両サイドが大いに歩み寄った」とし、「ギリシャは可能な限り早急な合意を目指している」と全く違うコメントを出しています。
この流れを見て、日本が戦争当時、大本営が発表するいい加減な情報にほんろうされた日本国民が思わず浮かんできてしまいました。ギリシャ内部では反緊縮を掲げたチプラス政権が政策的にほぼ行き詰ってきている中で気力だけで勝負しようとしているところに日本の戦争末期と同じイメージが重なってしまうのです。
左派チプラス政権の弱みは連立与党であり、その連立相手は右派であるのです。連立している唯一の接点は反緊縮であり、それが無くなれば連立は崩壊しますのでチプラス政権は上げたこぶしを下げられない状態にあります。政権に対する国民の支持率は非常に高い状態を維持している状況を考えると、多分ですが、トロイカとの会議などで苦境に立たされているバルファキス大臣は一種の国民のヒーローなのかもしれません。正に国連脱退の大演説を放った松岡洋右と重なるわけです。
一方、公務員への給与支払いを含めたキャッシュは払底しつつあり、いわゆるキャッシュマネージメントが進みつつあるようです。これは一般企業などで経営不振になった際、関連会社、子会社、営業所、支店などあらゆるところに分散するキャッシュを本社に集めて集中管理し、支払いを含めたコントロールをする仕組みですが、それをギリシャ中央銀行で行っているのです。
今回の会議で全く相手にされなかったギリシャ側ですが、最後のチャンスは5月11日のユーロ圏財務相会議であります。ここで画期的な財務改善案が打ち出されなければ12日のIMF宛7億ユーロの返済に赤信号がともります。ユーロ側はこの改革案が出来れば融資をする準備はできていると思われ、通常ではあり得ないですが翌日の資金になるものと思われます。
ギリシャの選ぶ道は3つ。一つはトロイカが喜ぶ財務改革案の承認を受け、難局を乗り切ること、二つ目はデフォルト、三つめはユーロ脱退であります。ロンドンのブックメーカーではこの賭けが既に成立しなくなっているそうですが、理由はほとんどの人がディフルトに賭けているからとのことです。
私も個人的にディフルトになる気がしております。そこでその責任を取って現政権は解散総選挙に入るでしょう。ディフォルト後にチプラス政権がそのまま訳の分からない運営をするシナリオは想像できません。ここまでのシナリオは既に市場で読み込んでいますから金融市場への影響は最小限に食い止められると考えています。
また、一部で囁かれるユーロ圏からの脱退ですが、それはユーロ圏のみならず、アメリカが承知しないと思います。理由はそれをすればロシアや中国が喜んで寄ってくるからであります。地中海に面するあの地は地政学的にも戦略的にも非常に重要であってユーロ側としては死守しなくてないけない地なのであります。また、以前から何度か申し上げていますとおり、ヨーロッパの歴史はドイツやフランス、オランダなど旧EECの発起国が全体を支配する構造となっているためギリシャがへばったら逃げないように縄で括り付けるぐらいになるはずでユーロからの離脱というシナリオは私はないと考えています。
24日の財務相会議はそれぐらい悲惨だったと言ってよいかと思います。ただ、ユーロ諸国がギリシャを諦めているのではなく、現政権を諦めているのだという点が極めて重要であり、ここを取り違えてはいけない点をあえて強調しておきます。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 4月25日付より