セル イン メイは本当に当たるのか?

東京市場はゴールデンウィークも終わり、今日から再開されていますが、海外市場の動向などを見ているとやや不安が残る立ち上がりになるのでしょうか?

まず、懸念材料がいくつかあります。


一つは今夜のイギリスの総選挙の動向であります。保守党と労働党の支持率はそれぞれ33%程度で650席の議席の過半数を取ることは難しいとみられる中、ハングパーラメントが見込まれています。その中で英国独立党やスコットランド民族党が第三勢力として力を伸ばしています。現与党の保守党は選挙で勝てばEUからの離脱を問う国民投票を実施することを公約としています。勢いを増す第三局の英国独立党もその政策からは与党保守党と連立する可能性がないとは言えないでしょう。

その場合、世論調査でEUからの脱退を真剣に望む人とEU継投派が拮抗しつつある中で離脱の機運が高まり、回復しつつあるヨーロッパ経済に不安材料を提供することになります。よって今夜の結果は経済的にも極めて重要な意味あいがあるかと思います。

次にギリシャ。こちらは不評のバルファキス財務大臣を「交渉人」からはずし新たな切り口で望むようですが、時間切れではないでしょうか?ギリシャがユーロから外れるというオプションは現時点ではあまりないと思います。IMFないしEUへの支払い期限は守れないもののデフォルトではなくオーバーデュー扱いで止め(支払遅延が一カ月以内ならディフォルトにならない)、相当厳しい条件をつけて再融資となるのでしょうか?その場合、現政権は解散総選挙ないし国民投票を実施せざるを得ない気がします。このあたりの不安材料をもう少し引っ張るという意味で懸念が残ります。

中国。自動車の生産能力が販売台数の二倍に上ると報道されています。それでもシェア争いで手を緩められない自動車各社は値引き販売に走っているため、利益率が落ち込み始めています。(輸出販売台数は90万台しかありません。)ある意味、中国市場をまだ十分に取り込めていない日系の自動車会社にとっては幸いすることになるかもしれません。ただ、この報道のポイントは自動車に限らず、住宅を含め多くの部門に於いて需要と供給のアンバランスが生じていることを暗示しているわけで、このコレクション(修正)の動きが出ればかなりシビアな問題となりかねません。

アメリカからはイエレン議長とウォレンバフェット氏が株価に警告を発している点に留意した方がよいでしょう。

バフェット氏はバークシャーの年次総会で現在の株価は低金利により支えられているため、金利が通常状態に戻れば割高というコメントを放っています。個人的には利上げは当面ないと思っていますが。

一方、イエレン議長はFinance and Society会議でIMFのラガルド専務理事からの質問に対して”I would highlight that equity market valuations at this point generally are quite high.” “There are potential dangers there.” と答えています。イエレン議長はレバレッジのローン市場(つまりノンバンク)の不健康さを具体的に指しながら株価の価値が高いと述べています。アメリカの投資家が株式の高所恐怖症に陥っていることは事実であり、必死になって投資先を探しているというニュースはあちらこちらから聞こえて来る中でこの発言はボディブローのような一撃でしょう。

ところで最近、バンクーバーでラジオを聞いていて「信用力のないあなたにも…」というファイナンス系のコマーシャルが耳につきます。今朝は某日系自動車販売会社が「最悪の信用レートのあなたでも車が買える」と面白おかしく宣伝しているのを聞いて末恐ろしくなりました。自動車会社はファイナンス会社を通じて遂に貸してはいけない人にまでクルマを売る気なのか、と感じます。その点はイエレン議長の警告に符合する点はあるのかもしれません。

アメリカの自動車販売はローン期間を長くする手段で販売数を伸ばしています。4月の平均ローン期間は67.8か月と過去最長です。かつて24か月リースが人気だった時代と全く違うアプローチであるわけですが、長期ローンは明らかに需要の先食いとなりますので今年か来年あたりから自動車業界は逆風に転じるはずです。普通車は既に逆風で最後の砦のライトトラックの踏ん張りも馬力不足となりそうです。

不安材料は尽きず、今週末の雇用統計も冴えないかもしれないとみられ、アメリカの景気は足踏み、利上げタイミングの予想は案の定、徐々に先送り気配が見えてきています。そんな中、原油価格は今日も元気でNYでは一時62ドル台をつけています。

空の色とは裏腹に黒い雲があちらこちらに見えている中、ここはしばし、シートベルトをしっかり締めた方がよいかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 5月7日付より

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。