137人のチベット人が焼身自殺した --- 長谷川 良

チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世の個人秘書を長く務めた後、亡命政府の対中国政府との対話担当官に就任した Kelsan Gyaltsen 氏はこのほどオーストリアのカトリック教会系隔週刊誌「フルへェ」との単独会見に応じ、中国共産党政府のチベット人弾圧とその同化政策などについて明らかにした。そこで同誌との会見内容の概要を読者に報告する。



▲中国共産党政権のチベット人弾圧を訴える亡命チベット人たち(2012年2月8日 ウィーン市内で撮影)

同氏は亡命チベット政府内で北京政府との対話担当だが、北京政府は接触を拒否しているという。北京政府は最近、「チベット白書」を発表したが、そのチベット政策に全く変化がないどころか、弾圧を一層強化している。

Gyaltsen氏は、「多くのチベット人は習近平国家主席時代に入れば少しは良くなるだろうと期待していたが、実際は弾圧は強化されてきた」という。4月にも2人のチベット人が北京政府の弾圧に抗議して焼身自殺をした。チベット亡命政府は、「外部の政府関係者、外交官を招き、捜査委員会を設置し調査すべきだ」と要求してきたが、中国側は拒否し、「ダライ・ラマ14世が自殺を扇動している」と主張している。

中国共産党政権は1950年、チベット地域に侵入後、その支配下に置き、同化政策を行ってきた。同氏によると、2011年以来、137人のチベット人が抗議の焼身自殺をした。彼らはチベット仏教僧だけではなく、通常のチベット人も含まれていた。特に、チベット北東部で焼身自殺が多い。彼らは20歳から30歳の間だ。「彼らは焼身自殺の際、他に迷惑を及ぼさないという原則を守っている」という。

「チベット人にとって焼身自殺は全く新しい現象だ。チベットの歴史でもなかったことだ。1997年、ニューデリーの亡命チベット人が焼身自殺をしたが、チベット内でチベット人の焼身自殺は2009年が初めてだ。そして11年に入ると、焼身自殺の件数が急増した。仏教では生きたものを殺すのは罪だ。チベットでも同じだ」という。

北京政府はダライ・ラマ14世の後継者選出の任命権を要求しているが、Gyaltsen氏は、「北京が後継者任命権を要求したということは、中国がチベットを政治的弾圧するだけではなく、文化的、宗教的、言語的に弾圧する意思があることを示している。北京は後継者の任命権だけではなく、チベット仏教修道院を共産主義プロパガンダ・センターに改造し、そこに中国国旗をたてる考えだ。中国共産政権は宗教的価値への尊重心など全く有していない」と批判した。

ダライ・ラマ14世が亡命政府の国家元首の立場を退陣表明し、宗教指導者となったことで、外国政府は今後、中国政府の顔色をうかがうことなく、ダライ・ラマ14世と会談できる期待が出ている。同氏は「ダライ・ラマ14世は亡命政府が樹立されて以来、段階的に政府機関の民主化を進めてきた。ダライ・ラマ14世は2011年まで政府首脳と国家元首の立場だったが、それ以降、民主的に選出された亡命政権にその権限を委譲してきた」と説明した。

なお、同氏によると、中国政府は地下資源が豊かなチベット地域を益々重要視し、その鉱物開発のため、高速道路や鉄道を敷く一方、約200万人の遊牧民を強制的に高層住宅地に移住させた。政府は2年間、彼らに財政支援したが、その後は支援をストップ。だから、強制移住させられた住民は新しい環境下で仕事が見つからないため、若い女性は売春、男性はアルコール中毒になるケースが増えているという。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。