昨年3月のブログ『基本の徹底と変化への対応~私が「セブンイレブンに学ぶこと」~』は、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さん及び其の下でコンビニエンスストア事業を立ち上げられた鈴木敏文さんに関し述べたものであります。
拙著『不変の経営・成長の経営』(PHP研究所)においてもまた、「いち早くPOS(販売時点情報管理システム)導入によって徹底的な在庫管理を行なった」日本で「科学的な経営を先駆けて実践した経営者」として上記お二方につき御紹介しました。
此の一方の鈴木敏文という御方は、「人間の心理を考えた細かなものの見方から仮説を立て、正確なデータによって検証していくことを継続的にやっていく」と言われている通り、仮説を立て検証するという姿勢を何時も徹底されてきた人で、あれ程までにそれを貫く人は少ないのではと思っています。
鈴木さんは「先行情報7割」「経験情報3割」とも仮説検証ということで述べておられるようですが、その意味されるところを単純に「将来のデータ7割」「過去のデータ3割」とは解釈できないのではないかと思います。
何れにせよ私自身、両情報とも言葉としては認識し兼ねるものですが、換言すればこれらは共に、推測に纏わる一要素であり一つの読みということであって、7:3云々といった最適比率は事象により異なりましょう。
例えば大地震の歴史を紐解き、関東を中心とする各地域で次の大地震のリスクが懸念されているようです。つまり今、80年から100年位に一度の発生リスクの蓋然性が極めて高くなっているのです。1923年9月に起こった関東大震災から見るに、地震エネルギーがかなり溜まっているのではと懸念されています。
こうした状況下でここのところ地震が頻発している中、様々な地震グッズが売れるであろうと推測できます。之は一つの経験則からの類推であり、両情報の比率の重きや其のどちらとも言えないでしょう。
だから私に言わせれば、経験情報も先行情報も「顧客の潜在的ニーズを察知させる情報」の類であって、頭の中で余りに分けて考えるべき対象ではないように思われます。寧ろ全事象に対して其の関連性や正当性等を見極めるべく色々な情報を常に集め続け、その上で臨機応変に判断を下して行くべきだと私は思います。大事なのは直観力をどう働かせ情報価値を見極め、価値あるものだけを選択するかということであります。
最後に一つ上記との関連で鈴木さんはまた、「過去の経験や常識に縛られると、思考や感覚にフィルターがかかり、どんな情報に接しても、価値ある情報として感知されません。先行情報がなかなか見つからなければ、自分たちの思考や感覚にフィルターがかかっていないか、問い直してみるべき」だと言われていることも御紹介しておきます。
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