「大陸のミス」の脅威にさらされはじめた韓国

大西 宏

昨日のメルマガで触れたように、調査会社IDCから2015年4~6月期の全世界スマートフォン出荷台数が発表されていました。対前年同期比でアップル(34.9%) 、ファーウェイ(48.1%)、シャオミ(29.4%)の3社が大きく伸び、対照的にサムスンがわずかとはいえ、-2.3%と前年同期を割る結果となりました。

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IDC PressRelease
 


一人負けの様相となったサムスンの不調は、主に3つの理由があると思われます。まずは表向きの理由です。打倒iPhone6、6Plusを宣言して投入したギャラクシーS6、S6エッジの需要予測を誤り、人気があったS6エッジが品不足になってしまったことで出荷数量が伸びなかったとしています。逆にいえば本来は量がでなければならなかったS6が売れなかったのです。

しかし、実際には大失敗だったといわれるギャラクシーS5につづいてフラッグシップ機で失敗したのだと思います。モノのスペックや性能、特徴づくりでの差別化しかできないサムスンの限界がでてきたのでしょう。
アップルが圧倒的なシェアを持つ 日本市場はやや特殊としても、量販店でのPOSデータから推計したBCNの6月の売上ランキングでギャラクシーS6がやっと37位に入っているというお寒い状態です。LG電子のNexus5は第10位に入っているので、韓国製品だから売れないというのではなく、ギャラクシーには魅力がないのでしょう。

 日本の家電が辿った失敗への道を今サムスンが歩み始めているという印象を受けます。モノの進化がユーザーニーズを超えてしまい、付加価値にならないというジレンマです。「デュアルエッジスクリーン」がそれを象徴しているようです。

第三の理由がもっとも重要なことですが、「大陸のミス」といわれる、ファーウェイやシャオミに海外だけでなく、韓国国内でも市場を奪われ始めていることです。「大陸のミス」は、「中国産なのに性能がいい」「中国の実力以上の製品」のことで、2009年に中国製イヤホンが韓国でヒットした際に生まれた言葉だそうですが、かつては中国製品というと安かろう悪かろうで、サムスンやLG電子のまともな競争相手ではなかったのが、「大陸のミス」が登場し、増加してきたことで、今や脅威になってきているというのです。
“大陸のミス”が急速に韓国市場に浸透、韓国メーカーの脅威に|中国情報の日本語メディア―FOCUS-ASIA.COM –

しかしこの「大陸のミス」は日本の家電にとっても決してあなどれない相手です。韓国メディア中央日報に掲載されたコラムですが、「大陸のミス」シャオミが展開する事業の領域が、これまでの常識の枠組みに収まらない、「シャオミ生態系」といわれる戦略ビジョンやそのパワーの脅威について書かれています。

携帯電話バッテリー、空気清浄器、エアコン、浄水器、扇風機、体重計、運動靴…。こうし
た製品を作る会社があるならどんな業種と言うべきだろうか? 情報技術(IT)会社でもなく、それでも家電メーカーと見るのも難しく、スポーツ用品とは
もっと違い…。まるで見当がつかない。中国シャオミの話だ。このところ熱い話題となっている「大陸のミス」突風の主役だ。

【コラム】「大陸のミス」シャオミ、いったい君はだれなのか(1) | 中央日報
 
シャオミの空気清浄機「mi air」は日本のバルミューダの「エアエンジン」のパクリと言われていますが、というかデザインは「エアエンジン」そのものとはいえ、模倣だけに終わらず、スマートフォンアプリを通じて室内の微細な粉塵を測定したり、不良を調節できたりする工夫を加えているのです。

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このコラムは、締めくくりとしてシャオミを軽視したことが今日のサムスンの危機につながったとし、韓国の産業が歩むべき道を探さなければならないとしています。

わずか2~3年前だけでもわれわれの認識の中でシャオミは「コピー品」だった。その突風から目をそらしたのが「サムスン危機」の原因だ。いまやわれわれは
真摯に尋ねなければならない。シャオミ、君はいったいだれなのか? どこへ行こうとしてい
るのか? その答を知ってこそわれわれもわれわれの道を探すことができるのではないか。

【コラム】「大陸のミス」シャオミ、いったい君はだれなのか(2) | |中央日報

 韓国の産業に限らず、日本の産業も、欧米だけでなく、台頭してくる中国の産業をも加え、グローバル市場のなかでどのような立ち位置を確保するのか、どのように競争優位を生み出しつづけるのかの視点がますます重要になってきていることは間違いないと思います。東芝のように社内政治にエネルギーを注ぐ余力はないはずです。