ミツバチは「自然ワクチン」を作る

生物には、自分以外の外敵を排除する免疫反応がある。この反応を作動させるのは、生まれながらにしてもつ自然免疫と、生まれた後に入り込んだ外敵に対応してできる獲得免疫だ。自然免疫は、身体に入ってきた病原体をマクロファージや好中球、食細胞が食べる。自然免疫をくぐり抜けた病原体が細胞内などへ入って感染すると抗体を作り、その病原体に再び感染しにくくするのが獲得免疫だ。

表題の記事では、病気に弱いミツバチが卵にワクチンを接種する、と書いている。米国アリゾナ州立大学などの研究だが、外界から働きバチが持ち込んだ病原体の抗体を含むビテロゲニン(vigellogenin)というタンパク質が女王バチの体内で作られ、このタンパク質が卵へ注入されることで幼虫が新たな免疫システムを獲得することになるらしい。ビテロゲニンは卵黄の前駆体タンパク質として知られている。

ミツバチは環境変化などの影響で世界的に激減しているが、花粉をやりとりさせるこれらの昆虫類が減ると植物相の破壊も進む。ビテロゲニンなどのワクチンは、ミツバチが環境変化へ適応させるために獲得した機能だ。また、ビテロゲニンのワクチンシステムを利用すれば、発展途上国などでより安価なワクチン接種ができるようになるかもしれない。

ScienceDaily
How bees naturally vaccinate their babies


How precision medicine could revolutionise the way we treat mental illness
BUSINESS INSIDER
遺伝情報の分析と解析が進み、fMRIなどの技術が進歩し、精神医学は劇的に進歩している、という記事だ。パーソナライズされた遺伝子、いわゆるSNPが次第にわかってきて非侵襲的に脳内の観察ができ、多種多様な治療薬も開発されている。しかし、運動神経回路に関する病気、たとえば筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因にしても、いくつか原因候補遺伝子が発見されているが、いまだに完治させるだけの薬はできていない。何かがわかったら、わかった分だけ謎が増える。脳や神経伝達の全容がわかるのは、かなり先のことになるのかもしれない。

Majority rule: Why conformity can actually be a good thing
EurekAlert!
これはおもしろい研究だ。カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)の研究者が、人間行動を数理モデルで解析した。UBCの学生と一般人、101人を調べたらしい。人間には「天邪鬼」なタイプもいる。特に「自分を賢い」と思い込んでいるタイプは、多数の意見に従わず、自分の判断を押し通すことが多い。だが、こうしたタイプはいざ自分の行動基準を見失うと、ほかのタイプよりも積極的に多数意見に従おうとする。研究者は事例として、どうやって細菌が病気を引き起こすのか、詳しいメカニズムをほとんどの人間は知らないが、トイレへ行った後には手洗いを励行する、といった行動には素直に従う。これは多数の人間がやっていることをマネているだけで、細菌と病気の関係は知らなくてもかまわない、というわけだ。

一粒で二度怖い話。「健康を維持するのは国民のつとめ」的なムードと、「わが国の伝統」への愛着が事実を歪めていること。
[today’s news from UK+]
これは英国の話だが、いわゆる「小さな政府」になっていくと、自己責任論というのが跋扈し始める。社会保障や医療制度は負担に耐えかね、社会的な格差によって対応を変えなければならなくなるわけだが、得てしてマジョリティである低所得者で低学歴な層ほど自分の健康には無頓着で、頓着したくても手の届く周囲にはジャンクフードしかない、という状況になる。彼らは将来、生活習慣病などになって社会資源を圧迫するようになる。これは宿命なのだろうか。ところで、当方は1960(昭和35)年に日本の全国清涼飲料協同組合連合が独自開発したコアップガラナが好きだ。これがある飲み屋が増えているような気がするがうれしい。ホッピーがあるところに多いのは、ホッピービバレッジがコアップガラナも作っているからだろうか。

Jimmy Carter: American Democracy Has Been Subverted into an ‘Oligarchy’ with ‘Unlimited Political Bribery’
ALTERNET
ジミー・カーター元米国大統領が、米国の民主主義は「寡頭制」と政治的な無制限の「賄賂」によって破壊されている、と言ったらしい。「oligarchy(寡頭制)」はギリシア語の「少数」を意味する「oligo」と「支配」である「arkhos」という言葉から作られた。民主主義というのはポピュリズムが蔓延したりすると根源的に寡頭制に陥る危険性を持つわけだが、これを「寡頭共和制」などと言う。さらに選挙にカネがかかるようになると、政治資金に贈収賄の色がつく。米国の政策は少数の利益を代表し、企業のためにある、というわけだ。


アゴラ編集部:石田 雅彦