障害者は社員・従業員として使えるのか

1週間前くらいでしょうか、堀江さんの周りで障害者に関する話というのが盛り上がったようです。炎上と言いますか、終始堀江さんは「生産性」についての話をしていて、障害があろうがなかろうが生産性の高い人も低い人もいる、ということを主張していました。にも関わらず誤解される方がおられたようです。
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ちょうど私も5月から知人が立ち上げた障害者向けの就労支援施設で、就労移行支援を手伝うことになりました。基本的に週2回、パソコンの操作を指導しに行っています(画像はそのA型事業所で入所者の方が作った商品です)。そこで感じることは障害者の方々が働けるようになるというのは素晴らしいことと思う反面、今の日本で障害を持つ方々が元気に働くのはなかなか難しいなということです

なぜか?それは日本という国の働き方・労働の仕方が大きく関わっていると感じています。

日本の労働はマルチタスクが前提

例えばですが障害にも様々ありますが発達障害の方や知的障害の方で、マルチタスクが苦手という方がいます。しかし今の日本では職務によって切り分けられていることが少ないために、多くの仕事を抱えなければなりません。また、それらの仕事の優先順位も上司が逐一判断するわけではなく、自分自身で判断をしなければいけません。

一見、簡単そうに見える一般事務や営業事務と言ってもやることは多岐に渡ります。請求書・領収書などの発行と処理・入力、売上の入力や経費の計算、そして営業先との電話やメールでの調整、会議室を抑えたりコピーをしたり、お茶を出したりと、様々なことをしなければなりません。最初からマルチタスクを前提とした職務として事務は切り分けられています。

さらに都内でも時給1000円程度の仕事であるコンビニの店員も同じようにマルチタスクです。商品の品出しと陳列、レジ打ちだけではなく、チケットや公共料金の受付、たばこの銘柄も記憶する必要があります。また最近はホットスナックやコーヒーなども販売しており、操作方法を知らなければなりません。昔はまだ作業量は少なかったかと思いますが、今はかなり複雑になっています。

事務やコンビニの店員を始めとして日本ではマルチタスクを一人で行うこと、そしてそれらの仕事が並行してできるジェネラリストであるということが求められています。だからといってそれが給料アップにはつながらないのですが。

もちろん一つだけの職務を行うスペシャリストというのもありますが、高いレベルを求められます。それが障害者の方に行えるだけのスキルを付けられるか、そのための教育を与えられるか?というと疑問です。そしてそういったスペシャリストの仕事はジェネラリストの仕事に比べて、数が多くはありません。

問題は障害者ではなく健常者側にある

日本の企業が障害を持つ方々を雇用するというのは素晴らしいことです。障害のあるなしにかかわらず、いきいき働ける社会というのは先進国として誇れるでしょう。ですが今の企業や社会状況のまま、障害を持つ方々を雇用してもいきいきと働くことはできません。一人ひとりの障害特性に合わせたマネジメントが必要ですし、その前に障害を持つ方々への教育も必要になります。それだけのことをする覚悟がこの日本社会全体にあるでしょうか。

本気で覚悟を持って障害者雇用を進めるということは、その人達を細かくマネジメントする必要が出てきます。躁うつの方であれば、その人のキャパシティを超えるような仕事を任せれば会社に来れなくなる可能性がありますし、最悪の場合は自傷行為などにも発展しかねません。身体障害を持つ方であればその方に合わせたシステムや機材、働くためのツールを用意しないといけません。

今の日本で障害者のためにコストをかけ、細かくマネジメントが出来る職場がどれだけあるでしょうか?障害者のために一肌脱ごう!という機運に日本全体がなっているのでしょうか?現在、障害者雇用には法定雇用率というのが定められていますが、平成24年の報告では50%未満となっており、半数が法律で定められた雇用率を超えていないのです(参照:PDF)。

法定雇用率のみ達成振りを見るだけでも、日本ではまだ障害者雇用を進める覚悟を一人ひとりの国民が持っているとは到底思えません。

障害者を雇用することは結構なことですし、障害者を雇用の必要性を声高に叫ぶことは結構なことです。しかしそれは裏を返せば、現在の経済活動を行っている健常者の方々が障害者雇用を増やさなければならないということです。当然マネジメントの労力はかかるし、コストは掛かります。それでも社会正義のためにやるというのであれば、それ相応の覚悟を見せる必要があります。単純に「障害者がかわいそう」という意見をTwitterでつぶやいたところで、全く障害者雇用は改善しません。

今現実として必要とされているのは障害者雇用に対する健常者の覚悟ではないかと私は思います。