中小企業がグローバル化へ一皮“むける”には

新田 哲史

どうも新田です。英語の会議では置物と化すL型人材です。まー、私のようなバカでも使いようで、国内のメディア事情はそれなりに知っているので、おかげさまで最近は外資系のマーケティング案件やら中小企業の海外展開絡みの広報打ち出しでご相談を受けておるのですが、先日、市場調査の一環で面白い本と会社に出会ったんですよ。


法改正のピンチから事業再定義でヒット商品に

朝日新聞には、もっぱら中小企業を取材しているという珍しいベテラン記者がいるんですが、その中島隆さんが去年書き下ろした「女性社員にまかせたらヒット商品できちゃった」で、足裏の角質ケア商品として成功したベビーフットを生み出した美容企業リベルタの成功ストーリーが紹介されています。


ベビーフットの事例は中小企業のマーケティング界隈では「伝説」的なケースなので、ご存知の方も多いと思います。念のため、軽くおさらいしておくと、1997年の創業当初は、水虫対策として、木酢液(もくさくえき)から作った液体に足裏を浸して角質を剥がす商品を作ってプチヒットしたものの、薬事法改正で「水虫に効く」という打ち出しがNGに。会社はピンチになるわけですが、ターゲットと用途を「水虫に悩む男性」から「ヒールやブーツを履く際に足裏の角質がひび割れするのに悩んでいる女性」に変更します。

女性の角質対策向けでは、既存の商品が角質を削っていたところを、再定義した商品では、“ずるむけ”させるのが特徴のようで、赤ちゃんのようなツルツルの足が実現するということで銘打った“新生”ベビーフットを2005年に発売。それでも再出発の滑り出しも決して順風満帆ではなかったようです。しかし、詳しくは本をお読みいただければと思いますが、同社には面白い女性社員さんたちが参集。芸能界で成功しなかったけれど突破力のある方とか、高校からグローバル人材になるのを目指していた意識高い系とかがいまして、“女子会”のノリでユニークなPR活動を開始。「足の裏キレイにし隊」というベタな名前のキャンペーンをやったりしたのも話題になり、ベビーフットは5年弱で100万個を売る大ヒット商品になります。

初期から日本も世界も取りに行く

ここまでの創業期だけでも面白いですし、2010年に日本PRアワード優秀賞も受賞したことで、マーケティング界隈には5年前までのストーリーはなんとなく知られているのでしょうが、私が思うのはここからが「本番」のようにも感じます。街で外人に英語で話しかけられて怯えるL型な私がいうのもアレですが、市場縮小が見え見えの日本経済にとって今後重要なのは、国内で育成・成功した中小ベンチャー企業がグローバル展開できるかどうか。いや、実は「国内で成功(例・上場ゴール等)→海外進出」という流れで考えること自体も古い概念かもしれません。リベルタが面白いのは中島さんが本でも書いているように「日本でも売るけれど、世界でも売る」という戦略を社長の佐藤さんが考えていたそうで、初めから世界市場を取りに行っているわけです。

※世界50か国で展開するリベルタ社のベビーフット

そういえば私の友人の起業家界隈では、転職サイトのビズリーチもそうでした。南さんも創業後数年で国内の高収入転職サイト市場を作って足場を固めるや、シンガポールや香港でハイスペック人材市場がどんどん動いているのを見逃さず、現地で小さなオフィスを借りてスタートアップの仕込みやって毎週のようにアジアと東京を往復していましたね。ビズリーチの場合は社長自らがアジアにトップセールスに動いていましたが、リベルタは、中国で事業経験のある若手の男性社員を海外進出のリーダーに指名し早々に動きます。宣伝広告費を大量にかけられないので、展示会の売り込み等から地道に取り組むと、取り扱い業者や顧客から次第に評価されていったようです。

世界進出のカギは3つの「ない」

本が出た後の話ですが、同社が7月に出したプレスリリースによると、ベビーフットは、このほど世界50か国で累計販売数が1,000万個を突破したそうです。ちなみに補足取材をしてみると、同社の佐藤社長は、世界進出の極意について、社長の佐藤さんは①他人に頼らない②噂を信じない③あきらめない—という3つの「ない」を掲げているそうです。

たとえば「アメリカで販売したら訴訟社会なので大丈夫か」みたいな懸案があるわけですが、そこで腰が引けていてはダメで、人の手を借りずに、自分の目と行動で確かめることがポイント。インドなんかは、独特の商習慣が日本企業の参入の壁になっている典型例ですが、韓国企業あたりが一時成功していたのを見ると、①と②は、何かヒントがあるような気もします。③について同社は、海外展開開始から数年は損失で会社の収益の4分の1を持って行かれたようで、撤退か継続か、その見極めが本当に難しいのですが、今後、私もクライアント予備軍の中小企業と協議する際に、大いに参考になりました。

ちなみに、この美容業界は世界各地でのローカライズが得意とは言えず、資生堂なんかは中国市場で苦戦もしているそうなのですが、佐藤社長は過去にJETROに日本の美容業界あげての展示会出展も提案して断られるといった苦い経験もあるようです。このあたり、「国策」として、日本の強みを生かしきれていない業界なり、海外のノウハウがないために国境で足踏みしている中小企業なりが、一皮も二皮もずるむけして活躍できるような環境をどう整えるか、政治的、社会的にも示唆することがあるような気がします。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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