日米、G20で対中姿勢を協調 --- 安田 佐和子

トルコのアンカラで9月4日に開催された20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、中国に対する日米の協調姿勢があらためて浮き彫りとなりました。

ルー米財務長官は、アンカラへ出発する前にCNBCの独占インタビューに応じ中国に説明責任を求めるスタンスを協調。同長官は人民元切り下げをめぐり「中国は行動や発表への手法によって、政策意図を示す必要性を理解すべきだ。また、ポジティブな方向へ歩み続ける姿勢を明確化しなければならない。我々は、中国に説明責任を求めていく」と発言しています。さらに長きにわたり、中国にはっきりとしたメッセージを送って来たとし「中国がいかに為替市場を管理するかが米国にとって重要な懸念材料で、中国は市場の力で人民元を上昇させる必要こそあれ、下落させる方向にはない」と明言。ルー米財務長官が2日「G20では、競争的な切り下げと目される動きについて協議すると思われる。(通貨切り下げは)不平等で、かつ世界経済を悪化させるものだ」との見解を表明し、人民元切り下げをけん制したことと整合的です。

その他、CNBCでのインタビューで中国に改革するよう主張。株安をめぐっては「直ちに懸念を起こさせるような状態ではない」と回答。市場動向を「注視していく」と述べています。

米財務省広報官によると、G20会合でもルー米財務長官は中国の楼継偉・財政相に対し「中国は経済のファンダメンタルズを反映した為替相場を採用し、不均衡な状態や競争的な切り下げを回避すべき」と要請したといいます。また政策意図と決定をめぐり、注意深く市場とコミュニケーションを図るよう釘を刺しました。

麻生財務相はアンカラで、記者団に対し「バブルがはじけたという言葉を3回くらい使っていた」と辛辣に明言。(ちなみに、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙も韓国系記者の協力を背景に同国財務相がG20で中国経済の鈍化に懸念を表明したと報道)。ルー米財務長官と足並みをそろえ、構造改革の必要性にも言及したといいます。共同声明で、「競争を狙った通貨切り下げを回避すべき」との文言を盛り込んだ背景に日米の協調を感じさせますね。特に抗日70周年記念式典の翌日で、中国の習近平・主席が今月下旬に公式訪米するとあれば、なおさらです。

白い歯を見せる麻生財務相(2列目中央寄り)とは対照的な、周総裁と楼財政相(前列左側)の表情に注目。


(出所:G20

日米の対応はドイツのショイブレ財務相による「中国の景気減速に思い悩む必要はない」とのコメントや、欧州委員会のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)が一連の政策につき「中国当局の成長維持に向けた確固たる決意」と評価した立場と、決定的な違いを感じさせます。欧州連合(EU)との貿易関係をひも解くと、中国は2014年時点にて最大の輸入国でEU全体の18%、輸出でも中国は米国に次いで2位で9.7%を占めます。輸出にいたっては、米国の7%より大きい。しかも2010年から2014年の対中輸出の伸び率が9.8%だったところ、2014年は前年比で11.2%まで広がってきただけにお得意様の中国に配慮する立場が伺えます。アジアインフラ投資銀行(AIIB)にも、参加していました。

中国人民銀行は5日、G20後に書簡を公表。会合の進展を説明しました。バブルに絡む言及に対し、中国人民銀行の国際部門局長は中国経済ではなく株式市場を指す」と補足したように、火消しする必要性に迫られたと考えられます。楼財政相がこれまでの楽観姿勢から一転し「今後5年、あるいは10年にわたり(構造改革の)産みの苦しみを味わう可能性がある」と発言したのも、声明公表の一因を作ったのでしょうか。

(カバー写真:G20


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年9月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。