TPPで安くなる食材の鍋を食べて関税撤廃を考えた --- 選挙ドットコム

先日、選挙ドットコムのオフィスにお伺いし、他のライターのみなさんと一緒に鍋パーティーをしてきました。

普段ネット上でしか交流していないみなさんと会えるのは楽しみでした。
選挙や政治に関心のある人(しかもライターさんは若い人が多い!)にお会いできる機会はあまり多くないので、とても楽しい会でした。

そして、メインの鍋!
ちょうど先日から寒くなってきており、タイミングもバッチリでした!

鍋の定番の白菜、ねぎ、鶏肉、そして肉好きな僕は豚肉と牛肉も足しました!
そして極めつけはソーセージ!
実はソーセージ、鍋と相性いいんです!ぷりぷりに煮えて、噛むと肉汁!
これからの寒い時期にはぴったりです。
・・・これじゃ鍋じゃなくてポトフだ!

TPPで関税が下がる食材


さて、実はこの鍋、ある政策をテーマに作った鍋なのです。
それは、「TPP」。

白菜以外は全て、TPPの影響を受け、関税が引き下がるものです。
TPP鍋の食材はこちら。

参考:
「TPP:関税撤廃、追加品を公表…オレンジなど 農水省」毎日新聞:2015年10月8日
「牛肉・ワイン…食品安く、家計に恩恵(TPP特集) 」日経新聞:2015年10月10日
単純に具材を見ますと、TPPの影響で安く食材が買えるようになります。

関税が撤廃されることは消費者にとっては値段が下がるので、嬉しいように思えますが、僕は国内の生産者さんがますます減ってしまうのではないか?と、とても心配です。

国内生産者を直撃する関税撤廃


中でも、豚肉を作っている養豚業者さんは激減するでしょう。
その最大の理由は、「国産と外国産に差がない!」ことです。
味がほとんど同じで、よっぽど舌の肥えた方でないとその違いに気付けません。その理由は3つあります。
(1)品種が同じ
実は、国内で育てられている豚は、海外の品種を日本に持ち込んだものなのです。そのため、品種がほぼ同じで、味も似ています。
(2)肥料も同じ
豚が食べている肥料も、海外から輸入したものなので、品種も同じで食べているものも同じですと、差が出ません。
(3)鮮度もほぼ同じ
技術の進歩で鮮度を保ったまま、冷凍させることができるようになったため、消費まで時間のかかる輸入の豚肉も、味がそんなに落ちなくなりました。
ですが、味が似ていても大きく異なるのが価格です。スーパーに行くと、豚肉、牛肉、鶏肉など全て共通して国産肉は高く、外国産肉は安い値札が付いていて買うのに迷ってしまします。

価格の差は2つの生産コストの差です。

(1)日本は輸入飼料を使っている
日本の畜産業では輸入飼料を使っており、輸入コストがお肉代にプラスされるので、養豚のコストの6割が飼料代とも言われています。

平成26年10月 農林水産省生産局畜産部「養豚農業を巡る現状と課題」より

(2)日本は人件費がかかる
100頭の豚にバケツでエサやりするのと、1,000頭の豚に機械でエサやりするのとでは、1頭当たりにかかる人件費に大きな差が出ます。海外の畜産業では機械化、大規模農場化が進んでおり、日本では小規模生産者の廃業が続いています。

平成26年10月 農林水産省生産局畜産部「養豚農業を巡る現状と課題」より

以上のことから、味も劣らず、安い外国産豚肉の関税が撤廃され、さらに安くなるということは、国内の養豚業者さんにとってとても厳しい状況になっていくのではないでしょうか。

豚の飼養戸数は貿易自由化が進んだ1971年以降、2014年までにおよそ40万戸から、5,300戸にまで激減しています。生産者の高齢化や後継者不足の影響、2010年の口蹄疫問題、そして外国産との価格競争。今後どうなっていくのでしょうか・・・

身近な鍋(というか、ポトフ)や、豚肉という食材からも、TPPといったような政策を体感することができますね。

皆さんもこれからの時期、ぜひ美味しい食材からも政治を考えてみてください。
ちなみに、これからの時期においしい「鱈鍋」からも、TPPは考えることができますよ!

ごちそうさまでした!

増沢諒:食べる政治代表
1988年長野市出身。早稲田大学卒業後、ITベンチャーでの勤務を経て、現在、東工大大学院修士課程。研究テーマは「ネットと政治」。ネット選挙解禁を目指す活動「One Voice Campaign」をはじめとし、様々な啓蒙活動を展開。2014年マニフェスト大賞受賞。
Twitter:mojamoja_megane
WEBサイト:http://taberuseiji.com/


編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年10月30日の記事『TPPで安くなる食材で作るオフ会の鍋、美味しくいただきながら関税撤廃に賛成・反対!?』を転載させていただきました(見出しはアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。