軽減税率を求めるマスコミの「翼賛体制」


軽減税率を求めているのは、新聞協会だけではない。出版業界も、日本書籍出版協会・日本雑誌協会・日本出版取次協会が、出版物への軽減税率の適用を求めている。これが経済学者が一致して反対しているのに「軽減税率批判の声が上がらない」原因だ。

同じようなことは、2006年に独禁法の新聞の特殊指定を解除するときも起こった。このときもすべての新聞・テレビが解除に反対し、それを批判したのはライブドアニュースと私のブログぐらいだった。その直後にライブドアに強制捜査が入った後は、新聞は一転してホリエモンを悪玉に仕立てた。

さらにその前例は戦時中だ。当時も新聞は検閲でやむなく大本営発表を垂れ流したのではなく、新聞を売るために一致して戦意昂揚記事を書いたのだ。今回も毎度おなじみの姜尚中氏や柳田邦男氏などの御用文化人が、「軽減税率で活字文化を守れ」と主張している。

しかし活字文化とは何だろうか。新聞協会は「ネット上の有料記事も軽減税率の対象にすべきだ」という。それなら当然、他のニュースサイトや雑誌サイトの有料記事も、私のブログマガジンも、軽減税率の対象になるわけだ。

要するに新聞や本だけが特権的な「活字文化」の担い手だった時代は、とっくに終わったのだ。「食品」か否かの定義も曖昧で、混乱の原因だ。EUのVATにもそういう批判が強く、ドイツでは軽減税率を廃止する方向だ。

そんな時代に、たった10%の税率を軽減しろという公明党のポピュリズムを新聞・雑誌が批判しないどころか、業界ぐるみの「翼賛体制」で応援している。日本のマスコミは戦後70年、何も進歩していないわけだ。