「ゆう活」は失敗したのか --- 駒崎 弘樹

こんにちは、定時退社経営者こと、駒崎弘樹です。
働き方の先端を走っていることを自負する私ですが、こんなニュースを見ました。

「ゆう活」業務削減につながらない傾向も NHKニュース
http://bit.ly/1GRLpj9

僕がプロピッカーをさせてもらっているNewspicsというニュースサイトでも
「ほら見たことか。役所に業務改善なんて、無理無理
役所と民間の論理は違う
「国会待機があるから無理でしょ」

的なネガティブなコメントが並びます。

実はサイボウズ青野社長や、ワークライフバランス社の小室淑恵さん等とともに、総務省の働き方改革プロジェクトのアドバイザーを拝命していたこともあり、また妻が地方公務員ということもあり、ちょっと反論したいな、と。

本ニュースでは「ゆう活」について、アンケート調査を行い、その結果である「定時以降の業務を「減らせた」と回答した人が47%にのぼる一方、「変わらない」が42%、「増加した」と答えた人も11%」ということで、批判的なトーンになっています。

しかし、本当の成果はこうした「どう感じるか」の調査とともに、実際の残業時間数がどの程度削減されたか、もあわせてみるべきで、そうでないと本当の効果は計れません。
(省庁の場合はタイムカードを押してないサビ残が常態化しているので、それでも正確なところは分かりませんが、それでもなおデータで把握する意味はあります)

また、どの省庁のどの部署で残業を減らせて、その部署は他のダメだったところとどう違かったのか、ということをクロス集計しなければ、「ゆう活が有効な手法か否か」は判断できません。

こうした働き方の改革は、やってみて、成功した部署やセクションから勝ちパターンを抽出し、それを横展開していく、というのが鉄板です。少しやってみて、全体を平均して「効果なかった人もいるみたいだから、どうなんだろうね」的な荒い分析で済ましちゃダメで、地味に分析と改善を重ねていかなくてはならないのです。

フローレンスでは、事務スタッフの平均残業時間は15分/日です。創業12年のベンチャーNPOとしては、良い線いっていると思っています。しかし、最初は長時間労働の塊みたいな職場でしたが、小さなところから始めていって、成功したやり方は全社展開し、失敗したら引っ込めて分析し直し、またやって、を繰り返してきて、今の残業レスな職場を実現しました。

基本原則は省庁等の行政機関も一緒です。ちなみに「行政だからできない」というのは、根拠がありません。僕も訪問したことがありますが、日本が議院内閣制のお手本とするイギリスの省庁では、国会待機もせず、異常な長時間労働もほとんど無いようでした。要はやり方次第だ、と。

省庁の長時間労働が変われば、それに付き合っている大企業の労働文化も変わり、中小に波及し、日本の職場全体が変わることに繋がります。いち国民としては、冷笑的にならずに、省庁の努力をサポートしていきたいものです。

———-下記、NHKニュースより転載————————-

「ゆう活」業務削減につながらない傾向も
11月9日 4時17分

政府が働き方改革の一環として、ことし夏に実施した、始業時間を早めて夕方に仕事を終える試み「ゆう活」について、中央省庁の職員にアンケート調査をした結果、働き方の意識を変えるきっかけになる一方、業務の削減につながらない傾向もあったとして、来年度は改善を加えて実施したいとしています。
政府がことしの7月と8月の2か月間実施した、始業時間を1、2時間程度早めて夕方には仕事を終える試み「ゆう活」には東京・霞が関の中央省庁で働くおよそ4万3000人の職員の8割以上が参加し、内閣人事局は職員にアンケート調査を行って効果を検証しました。

それによりますと、「ゆう活」を実施した一般職のうち、定時以降の業務を「減らせた」と回答した人が47%にのぼる一方、「変わらない」が42%、「増加した」と答えた人も11%いました。
また「ゆう活」の影響を複数回答で尋ねたところ、一般職の16%が「業務をより効率的に行うことを意識するようになった」と回答したのに対し、これを上回る24%が「業務の終了が早まらず、疲労が蓄積した」、33%が「生活リズムの乱れなどで寝不足になった」と回答しました。

政府は「ゆう活」が働き方の意識を変えるきっかけになる一方、業務の削減につながらない傾向もあったとして、来年度は改善を加えて実施したいとしています。



編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2015年11月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。