得意のハッタリ?前原氏が民主党に影響する3つの理由 --- 選挙ドットコム

民主党の前原誠司・元外相が突然動き出した。年内に同党を解党し、維新の党などと合流して新党を結成するべきとの考えを明らかにしたのだ。岡田克也代表は前原氏の主張を現時点では受け入れていないが、野党再編をめぐる党内の「路線闘争」を前原氏が主導しようとしているのは間違いない。実際、前原氏は維新の党前代表の江田憲司氏とも会談を重ねるなど激しい動きをみせている。一連の言動は、「集団離党の前触れ」との指摘もあるが、真意はどこにあるのか。

▲「前原誠司(まえはらせいじ)-ホームページ」より

「一兵卒」で動きやすい


かつて党代表を経験し、民主党政権では国土交通相、政調会長、外相などを歴任した前原氏は現在、衆院予算委員会の筆頭理事という地味なポストに就いている。予算委は与野党対決の主戦場であり、決して「閑職」ではないが、年中行われるわけではない。

そもそも、前原氏は党執行部に入っておらず、事実上の「一兵卒」が続いている。これは裏を返せば、政局を自由に仕掛けられるフリーハンドな状況にいると言っていい。

一方、前原氏と対照的なのが細野豪志政調会長だ。事実上の「解党派」である細野氏だが、要職にあり、身動きが取れない。しかも、岡田氏や枝野幸男幹事長は、代表経験者の前原氏には丁重な態度を取るが、細野氏には冷たく、いくら細野氏が自分の主張を訴えても聞き入れてもらえない。前原氏の言動を可能にしたのは、党内の立ち位置という物理的な要素もある。

橋下氏とのパイプ


前原氏は、新党「おおさか維新の会」代表の橋下徹大阪市長と懇意である。民主党の国会議員の中で、橋下氏と「1対1」で会食できる関係を持っているのは前原氏だけといわれている。

2人の関係は橋下氏が大阪府知事時代にさかのぼる。前原氏は当時、民主党政権で国交相を務め、伊丹・関空の両空港の経営統合問題で橋下氏と共闘した。以来、2人は急接近し、前原氏は今春ごろから「橋下維新と合流して野党再編だ!」という持論を繰り返してきた。

民主党と維新の党の「残留組」と新党を結成するだけでは迫力がない。なんとかして橋下氏を引っ張り込まなければならない。その役割を果たせるのは自分しかいない―。前原氏は、橋下氏との強力なパイプを野党結集に活用しようとしている節がある。

アンチ共産党


「共産党の本質はよくわかっている。シロアリみたいなもので、協力したら(民主党の)土台が崩れてくる」前原氏は11月14日午前の読売テレビの番組「ウェークあっぷ!プラス」で、党勢拡大中の共産党を痛烈に批判した。

前原氏は京都2区選出だ。京都といえば共産党の金城湯池。いざ選挙となれば「対自民・公明」だけでなく、「対共産」にもエネルギーを割かなければならない土地柄だ。つまるところ、共産党は敵でしかない。

だが、盟友であるはずの岡田氏が、共産党との選挙協力に一時的とはいえ、前向きな姿勢を示してしまった。前原氏は、民主党執行部が安全保障関連法をめぐり、共産党と一緒になって「反対一辺倒」戦略を選んだことも批判している。共産党と手を組んでいるかのような党の現状に我慢できなかったのも、「解党→新党結成」発言を後押しした可能性が高い。

以上が、前原氏の言動をめぐる三つの事情である。
残りの焦点は、前原氏が離党覚悟で解党、新党結成を考えているかどうかである。本気でなければ誰も動かない。前原氏には、これまでの「言行不一致」から、言動そのものへの懐疑的な見方が根強い。

さらに、それ以前の問題として、解党に慎重な議員が大多数ということも忘れてはいけない。それでも、今回の前原氏の動きは、閉塞感漂う党内にある種の緊張感を与えた。久しぶりに民主党に注目してもいいかもしれない。

永田一郎



編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年11月17日の記事『離党覚悟?得意のハッタリ?前原誠司氏が、それでも民主党に影響を与える3つの理由』を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。