中傷や脅迫も覚悟で私が子どもの貧困に声を上げる理由 --- 駒崎 弘樹


昨日、知人の男性から連絡がありました。
ある会議の席で、以下のような発言があったそうです。
要約すると

「駒崎さんは、ひとり親の児童扶養手当の拡充で運動しているが、それは儲けようとしているからでは」

「政治家や官僚とたくさん会って、自社に利益誘導しようとしている噂がある」

それに対して、行政関係者の皆さんや出席者の方々が戸惑われたようです。私は、その会議に出席しておりませんでしたので、どのような感じだったのかわかりません。ただ誤解が多くあるようなのでここでお話しさせて頂けたらと思います。

まず、ひとり親の児童扶養手当というのは、ひとり親世帯自身に月々給付されるものです。よって、児童扶養手当が増額されても、フローレンスに補助されることもなく、ましてや僕の給与とは何も関係ないです。実益は全くありません。

また、フローレンスはひとり親向けの格安病児保育を行っていますが、それはもともと赤字事業です。赤字分を寄付で埋めています。児童扶養手当が増額されても直接的に実益はありません。

更に、政治家や官僚とたくさん会って自社に利益誘導とのことですが、ひとり親や子どもの貧困が解消されることで我々が儲かるなんてことは当然ありません。また、政治家に会ったくらいでフローレンスへの補助金がでるほど、日本の政治が壊れているとは思いません。

知人からの電話の後に、正直なところ少し落ち込みました。実は昨日も職場に、「駒崎を刺す」等の暴力的な脅しの電話がかかってきました。顔を出して社会の変革を訴えることをすれば、いろんなことが起こります。

一昨年、ネット上で家族の写真がさらされたり、殺人予告をされたりしたことがありました。警察に相談し犯人は逮捕されましたが、その間、とても怖かったです。

でも、それから僕は覚悟を決めています。誰からどのように中傷や脅されようと、ひとり親の低すぎる給付に対して、子どもの貧困に対して、声をだし続けます。

なぜ自分や家族も中傷されることも承知でそんなことをしているのか。それは、私が、実際にお会いした、困難を抱えた人たちの顔を忘れられないからです。

DVを受けて逃げるようにして夫のもとを出た人。精一杯働いても十分な収入を得られず、それでも「もっと頑張れますから」と生活保護を申請しようとしない人。
子どもが熱を出し、看病のために休んだだけで解雇された人。

病児保育の仕事を始めて、続ける中で見えてきたひとり親への支援。彼女たちが声をあげられないのなら、自分が声をあげなくてはと思いました。

私の性格が完璧でないのは十分承知です。完璧どころかものの言いがえらそうに聞こえたり、言わなくてもいいことを口走ったり勇み足であったりすること深く反省してます。
まだまだ未熟者で皆さんにご迷惑をおかけすることもあり本当に申し訳ないとも思っています。

ただ、聞こえない声を代弁し、問題提起し、解決にむけてどんなことがあっても、私は動き続けたいのです。ひとりでも今まさに苦しんでいる人と、そして子どもたちの生活が良くなりますように。



編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2015年11月20日の記事を転載させていただきました(タイトルはアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。