韓国の映像ビジネスが揺れています。 --- 中村 伊知哉

アゴラ


国際放送コンテンツ展BCWW2015@ソウルに参りました。
韓国政府(文化大陸観光部とコンテンツ振興院)が主催しているんです。政府ですよ!
わがゼミ出身、NAVER社長室の韓さんと、KMD博士課程の黄さんとともに視察しました。

日本もNetflix上陸はじめ、ネット映像ビジネスの本格化が見込まれ、通信・放送の融合という名の長い間の課題といいますか、宿痾といいますか、が現実の像を結ぼうとしていますが、韓国はネット基盤の面でも、ビジネス展開の面でも、利用面でも、先を走っています。

それがそのままの形で日本に押し寄せてくるのか、テレビやネットの産業構造や文化の違いから、全く別モデルになるのか、まだ予断を許さない状況だと思いますが、ひとまず考えるヒントにはなりました。


NAVERのウェブドラマ Noble My Love。
1話1分程度で、200万ビュー!を稼ぐ。
NAVERはプラットフォームに徹し、制作費を出していないそうです。


LINEやウェブマンガに力を入れていたNAVERはここ1年、動画(と金融)に力を入れ、既に利用時間でYouTubeを抜いたとのこと。
勢いがあります。


放送番組は規制のせいで競争力を失い、放送局もケーブル局もウェブ番組に力を入れているとのこと。
放送から通信へのシフトは速まるか。気になるところです。


コンテンツ振興院KOCCAが「YLAB」制作のマンガを映画化した「Prince of Prince」を紹介していました。YLABを経営するマンガ作家ユンイナンさんは、ウチの博士課程の学生でもあります。NAVERのウェブマンガ→映像化で収益確保というビジネスができあがっているんですね。


子ども向けキャラクターを作り、教育コンテンツにして海外展開、それを支援するのが政府方針とのことです。
日本政府がドラマ等の放送コンテンツに力を入れているのとは対称的です。
教育コンテンツを海外展開するという戦略を日本も取れないものでしょうか。


たくさんの個人チャンネルをメディア化するMCN(Multi Channel Network)が力を持ってきているとのこと。
映像は1本72秒がフォーマットだったが、最近は40秒に移行しつつあるとか。
ショートコンテンツ化はどこまで進むでしょうか。


この前日、Netflixが韓国に参入を宣言、会場はザワついています。
「韓国はIPTVが月1000円程度であるし市場も小さいから、プラットフォームよりもコンテンツに投資するのが主な狙いではないか」と韓さん。
ぼくもそう思います。日本への参入も、コンテンツ確保が主目的ではないかな。


中国のテンセントが韓国のゲーム会社を買収しているのと同様の戦略をNetfilxは映像コンテンツで実行しようとしている、のかもしれません。
とすると、Netflix参入はNAVERや通信会社のようなプラットフォームよりも、プロダクションや放送局のほうが関心を示しそう。この点、映像プラットフォーム争いがこれからの日本とは状況が異なりそうです。


フジテレビも出展。CiP会員、がんばっております。


テレビ朝日も出展。CiP会員、がんばっております。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年12月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。