ビジョンを示せない民主党に明日はない

安倍内閣の支持率がそれなりの水準を保ち、直近ではわずかとはいえ上昇し、不支持率が低下してきている背景には、対抗する野党が存在感を失っているということもあるのだと思います。いうまでもなく、最大野党の民主党が戦略も情報発信力も失い漂流し、氷解し始めたからです。



【図解・政治】内閣支持率の推移(最新)
かつての中選挙区制度では、与党内部での力の均衡が政治に強く影響しましたが、二大政党制を目指した小選挙区では、党内で政権をチェックし、また拮抗力を培うことは難しくなり、それは野党の責任になってきます。

その意味で、民主党は野党として失敗しています。

ドラッカーは、企業の目的の定義は一つしかなく、それは「顧客を創造すること」だとしましたが、政党も同じで、その目的は、共感や信頼を創造していくことでしょうし、それによって支持者を広げていかなければ、掲げている理念や政策の実現はありえません。民主党に決定的に不足していると感じるのは、そんな支持者を自らの主張や努力で広げようとするための戦略です。

民主党は、いったい誰に支持してもらいたいのでしょうか。労働組合でしょうか。実際には、民主党が共感され、信頼を得るための努力なり、能力が不足し、支持基盤がやせ細るとともに、労働組合の影響が強まってきているようです。

しかし日本の労働組合は斜陽化してきていて、労働組合の組織率が4年連続過去最低を記録し、今では働いている人の17.5%しか組合に入っていないのです。

時代の変化に対応できなかった労働組合に依存するだけでなく、実態も影響力もあるとは言えない市民グループとの連携にずいぶん期待をかけはじめているようです。

菅直人元総理なら、そういった思いがあってもわかりますが、岡田代表まで思考力を失ったのか、安全保障関連法に反対する市民団体や学生団体が独自に候補者を擁立した際には、党として支援を検討する考えを示したり、もう支持率で泡沫政党化した東京維新と統一会派をつくるとあっては、正気の沙汰とも思えません。

安倍内閣が「保守」を代表しているので、「革新」で結集すれば力になるとでも考えてのことでしょうか。しかし、今や東西冷戦時代ではなく、「保守」も「革新」も存在意義を失ってしまっているのです。

安倍政権は、新自由主義に走っていると批判しても、米国の共和党から見れば、どこが新自由主義かと疑われるような保護主義政策をとっているのが日本です。そんな手垢のついた批判では、利権がからんだ特定の層からしか支持を受けることはできません。

理念やビジョンを示せず、政権の政策に反対を唱えるだけでは、支持を失うことは、大阪のダブル選挙が見事に証明しています。

目先でバタバタしても、民主党の再生は難しく、じっくり腰を据え、日本が活性化し、また社会が潤っていくためには、なにをすればいいのかを固め、次の10年をどう歩み、また20年先の日本をどうしたいのかを国民に示す以外に道はないように感じます。