デフレの勝ち組として、一世風靡したビジネスモデルが一挙に崩壊していくプロセスをマクドナルドはまざまざと私たちに見せつけてくれています。そして、いよいよ終章を迎えようとしているようです。日経が、日本マクドナルドの最大約33%分の株売却を米本社が大手商社や国内外の投資ファンドに打診していると伝えています。
日本マクドナルド・ホールディングスのホームページを一応確かめてみましたが、記事を否定するニュースリリースがでておらず、記事に間違いはないようです。
日本マクドナルド売却 ファンドなどに米本社打診 株最大33%分 経営権移し、抜本改革 :日本経済新聞
やはり自主再建には限界があると判断したのでしょう。原田前CEOがマクドナルド凋落への引き金を引き、受け継いで経営再建にあたったサラ・カサノバCEOは、あの手、この手を繰り出してきたものの、いやいやマクドナルドに求められているのは、ビジネスモデルの進化であって、カイゼンではないと、誰もが経営の取り組みと現実とのギャップを感じたのではないでしょうか。そして悪いことは重なるもので、期限切れの鶏肉使用問題、続いて異物混入の地雷を踏んでしまいました。
勢いのある旬な企業なら、そういった問題を克服できたかもしれませんが、老朽化し競争力を失ったビジネスモデルにとっては、回復できない致命傷になってしまったのです。
こういったアクシデントがなくとも、マクドナルドのビジネスが成り立たなくなってきたことは、直営店の原価率の推移を見ればわかります。2015年上期の決算で 日本マクドナルドホールディングスは、最終損益が262億円の赤字に転落したわけですが、足元の店舗も、もう運営がまともには成り立たないところまで採算が悪化してきている、それがマクドナルドの現実です。
グラフを見れば、どんどん直営店の原価率があがってきたことがわかります。平成21年では、原価率は71.5%だったので店舗での粗利が30%近くもあったのです。そして原価率が上がり続け、平成26年にはなんと、96.1%に達してしまっています。原因はともかく、それだけビジネスやメニュ-に魅力も付加価値もなくなってきたのです。もうビジネスとしても成り立たないレベルにまでになってしまったということでしょう。それで当然のように赤字になってしまったのです。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 高い原価率は、いかにマクドナルドが競争力を失ったかを物語っている
マクドナルド凋落の軌跡が語っている重要なメッセージは、競争環境や消費者の価値感や嗜好の大きな変化が起こり、ビジネスモデルが通じなくなったときには、経営の根本的な考え方や仕組みから見直し、変革を行わないかぎり、通じない時代になってきたということだと思います。ワタミもまったく同じです。
顧客からの支持や共感を得るためには、日本の市場にフィットさせるための経営改革が求められますが、それを内部だけで行う限界を感じた米本社の判断は正しいと思います。。もっと変化を感じるメニューの開発、それを可能にする日本独自の原材料調達の新たなルートも必要になってくるのでしょう、それらは、これまでのマクドナルドの人材や組織では実現できなかったことです。
いったいどこが日本マクドナルドを立て直すのか、またどう立て直すのでしょうか。最近は近くのマクドナルドも閉店し、関心が薄れていたのですが、この成り行きを注目したいと思います。