韓国の反日感情は、そう古いものではない。日本の占領時代を知っている世代には反日感情はほとんどなく、朴正煕大統領は日韓基本条約という「経済援助」に感謝した。しかし全斗煥政権になってから、1980年の光州事件で大量虐殺を行なったりして反政府運動が強まった。
ちょうどこのころ、日本の文部省が高校教科書の「侵略」を「進出」と書き換えさせたという誤報事件が起こり、全斗煥は国民の怒りを日本に向けさせようと「独立記念館」を建設した。ここには毒々しい蝋人形で「日帝」の悪業が展示され、韓国の小学生は全員、遠足で見学して日本への憎悪を植えつけられる。
このように反日感情は80年代に軍事政権によって創作されたものだが、その中で慰安婦を「挺身隊」と呼ぶ反日団体(挺対協)ができ、これに迎合して高木健一や福島瑞穂が、韓国まで行って原告を募集した。最初はこれは戦時賠償訴訟だったが、すべて原告が敗訴した。
そこで今度は吉田清治の嘘をもとにして、慰安婦が日本軍に「強制連行」されたという報道を朝日新聞が繰り返し流したため、福島らはこれに合わせて、問題を戦時賠償から国家犯罪にすり替えた。
当然この話は吉田の捏造なので、強制連行の証拠は出てこなかったが、1993年に外務省は、「日本が強制性を認めれば賠償は求めない」ということで韓国と政治決着をはかり、河野談話を出した。このときは金泳三大統領みずから「最終決着」と決断した。
しかし挺対協はこれに納得せず、日本の国家責任と賠償を求めて政府を攻撃した。韓国のすべてのマスコミも朝日新聞などもこれに合流したため、1995年にアジア女性基金という民間基金に政府が出資する形で決着した。
ところが今回、同じ話が蒸し返されている。その後、日本政府が慰安婦を強制連行したという新証拠が出たならともかく、むしろ朝日新聞が大誤報を謝罪して社長が辞任したのだから、客観情勢は韓国側に圧倒的に不利である。日本がいま譲歩する理由はない。
ただ北朝鮮や中国の情勢が不安定化している情勢では、日韓で軍事情報の交換もできない状況は危険だとアメリカが判断したのだろう。北の政権が崩壊すると、日本にも大量の難民が押し寄せる可能性がある。
しかし日韓で正常な外交交渉を行なうには、まず韓国政府が挺対協に少女像を撤去させることが必要条件だ。それもできないようでは、挺対協が政府より優位にある状況が変わらないということなので、政府間で何を約束しても守られない。