マクドナルドが復活する方法を考えてみる --- 佐藤 昌司

アゴラ


▲日本マクドナルドは今年こそ立ち直れるか(Wikipediaより、アゴラ編集部)

日本マクドナルドHDの15年1~9月期連結決算の最終損益は292億円の赤字だった。15年12月期連結決算の最終損益は380億円になるとの見通しも発表されている。業績悪化の大きな要因は、一昨年7月に発覚した中国工場での消費期限切れの鶏肉の使用問題と、昨年1月に発生した一連の異物混入問題だろう。

業績悪化が著しいマクドナルドであるが、あえて、復活するにはどうればいいのかを考えてみたい。まず、マクドナルドは「ハンバーガー屋」なので、売れるハンバーガーを開発する必要がある。新商品の開発である。マクドナルドはそのことは百も承知で、健康志向に配慮した「ベジタブルバーガー」を販売したり、地域の食材を使った商品の期間限定メニューを販売したりと新商品を投入し続けている。

しかし、どれもパッとしない。今のマクドナルドが新商品を投入してもヒットさせることは難しいだろう。前社長の原田泳幸氏の著書『成功を決める「順序」の経営』(9ページ)には「誰もがマクドナルドをバカにしている時に、新商品なんか出しても売れるわけがない」とあるが、まさにその通りだろう。原田氏は、世間の評判が著しくないときは新商品でヒットを出すことよりも、まずはQSC(Q=クオリティ、S=サービス、C=クリンリネス)を地道に行っていく必要があると述べているが、筆者もこの意見に全面的に同意する。今の消費者は、食品消費期限切れ問題などを起こしたマクドナルドのことをバカにしている状態なので、しばらくは新商品を出してもヒットさせることは難しいだろう。

しかし、しばらくは新商品のヒットは見込めないだろうが、それでも新商品は開発し続けなければならないだろう。ここで、マクドナルドの商品戦略について考えてみる。新商品の開発の目的は「集客」にある。新商品で集客して他の商品で利益を確保する戦略である。原田泳幸氏は自身の著書で「新商品はあくまで集客の手段であり、ビックマックなどの利益率が高い商品で利益を稼ぐ」という趣旨のことを述べている。新商品で集客し、ビックマックやフライドポテト、ドリンクなどの利益率の高い商品で儲けるという構図だ。逆に言うと、新商品のヒットがないとマクドナルドは利益を稼ぐことができない。

マクドナルドはジレンマに陥っている。新商品で集客しなければならないが、今のマクドナルドでは新商品をヒットさせることが難しい。しかし、いずれは集客を図らなければならないのだから、新商品は開発し続けなければならない。結局は月並みな答えだが、原田氏が言うように地道にQSCの推進、つまりクオリティ(Q)の高い商品を提供し、接客などのサービス(S)品質を高め、いつも清潔感があるという意味のクリンリネス(C)を地道に行っていくしかないといえる。

マクドナルドは苦境に立たされている。ただ、必ずしも絶望的な状況とまでは言い切れない。それは、復活するための経営資源が必ずしも枯渇しているとまでは言えないからだ。

15年3月に日本マクドナルドHDは金融機関から220億円の借り入れを取締役会決議した。それまでの借入金(長期借入金)は長らく5億円で維持してきた。借り入れを行わなくても経営ができていたのだ。昨今の業績悪化でさすがに220億円の借り入れを実施したが、それでも長期借入金は同業他社と比べても少ないほうだ。例えば、外食産業で売上高首位のゼンショーHDの2015年3月期における長期借入金は884億円にもなるが、日本マクドナルドHDの2015年第3四半期の長期借入金は187億円と格段に少ないことがわかる。すかいらーくにいたっては1,398億円にもなる。

マクドナルドは資金を借りる余力が十分にあることがわかる。220億円の借り入れは無担保・無保証・年0.5%程度の超低利で融資されている。融資した金融機関はマクドナルドを信頼しているからこそだろう。マクドナルドを長期的な視点で見るべき企業と考えているからではないだろうか。金融機関などはマクドナルドにもっと融資したいと思っていてもなんら不思議はない。このことからも、マクドナルドの財務内容は絶望的とまでは言えない。まずは融資や株式売却等で資本を強化し、調達した資本により新商品開発などでテコ入れを図っていく。並行してQSCを強化していく。奇抜的なことを行うのではなく、地道な企業努力をコツコツと続けていくしか他に道はないのだろう。

佐藤 昌司
株式会社クリエイションコンサルティング 代表取締役社長