東京港区のベイエリア、竹芝地区にデジタル・コンテンツの街を創る構想、CiP(Contents Innovation Program)。発足に当たっての宣言、その4。CiPの研究と教育について。
4) 研究開発と人材育成
研究開発は、CiP協議会の理事・会員の提案に基づいてテーマを設定する。ただ、協議会設立前の現時点において、既に10件程度のアイディアが寄せられている。
例えば「超人スポーツ」。ウェアラブルやロボティクスなどの技術を駆使した新しいスポーツを開発する。誰もが超人になれる環境を整備する。CiP協議会と同時期に形成される「超人スポーツ協会」と連携する企画だ。
「次世代デジタルサイネージ」。2020年に向けて、4K8K・多言語で、防災対応のサイネージシステムを開発して整備する。本件は総務省にて研究会が開催され、東京都も熱心な案件だ。竹芝をサイネージ特区にして、ショーケースにする案もある。
「アーティストコモンズ」と「音楽アーカイブ」。アーチストコモンズは、アーティストにIDを付番し、コンテンツやグッズ等が流通・管理しやすいようにする音楽業界によるプロジェクト。そのためのシステムと、データベースを開発・構築し、実証実験を行う。これに連動する音楽と映像のアーカイブを、著作権特区として竹芝に置く案もある。
「IT政策研究」。国際的なIT政策の重要アジェンダを整理し、研究するプロジェクト。本件は既に慶應義塾大学とスタンフォード大学との間で共同研究が進められ、日米の関連企業や政府・国際機関も参加している。これをCiP協議会が受け皿となって引き継ぐ。スタンフォード大学主催の「シリコンバレーモデル研究」の日本側受け皿となる案もある。
このように、技術開発だけでなく、ビジネスモデル、政策研究、教育カリキュラム開発などさまざまなプランがある。理系の案件に加え、法律、経済、デザインその他広範なジャンルのかたがたに協力いただく。
研究を進める中核として、慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)は竹芝に拠点を置く計画である。共同研究を進めているスタンフォード大学にも参加を期待する。国内の有力な大学及び研究機関との連携・共同研究を進める。併せて、米国、欧州、アジアの有力大学にもプロジェクトベースでの連携を働きかける。その発展形として、共同研究機構の形成を目指す。
人材育成、教育面でも、KMDをはじめとする大学・大学院に加え、専門学校等と連携して、プロのクリエイターやプロデューサーの育成を図る。
人材育成プロジェクトの第一弾として有望なのは、文部科学省「マンガ・アニメ人材育成事業」。各種学校、関係企業がデジタル人材育成の方策を練っており、カリキュラムの開発を進めている。CiPはその活動及び実証の場として機能したい。こうした活動を、音楽、ゲームその他のコンテンツ領域にも広げていきたい。
CiPの行う人材育成は高等教育だけではない。子どもの表現力・創造力の高さが日本ポップカルチャーを下支えしている。その力をデジタル技術で高めることは日本にとって重要な戦略となる。
NPO「CANVAS」は子どもの表現力・創造力を高める活動を推進しており、最近はプログラミング教育の全国展開を進めている。また、学校教育のデジタル化を進める「デジタル教科書教材協議会」(DiTT)は未来の教室の設計を手がけようとしている。CiPはこれらと連動して、初等教育からコンテンツ人材を育成する手法を構築していきたい。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年1月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。