アップルに「次の一手」はあるか

大西 宏

いま、ビジネス・ジャーナルの連載コラムで、時代を牽引する企業として、アップルの次の主役を担う企業がどこなのかを書きはじめています。今、まさにアップルは絶好調ですが、いつまでもそれが続くとは限りません。アップルが高利益体質を維持したとしても、なんらかの新しい事業を生み出さなければ、成長鈍化は避けられなくなってきそうです。


原因は、スマートフォン市場の成熟です。昨年、スマートフォンの世界出荷台数の伸びに急ブレーキがかかりました。2015年第3四半期では、6.8%増の一桁にまで鈍化してしまったのです。アップルは売上の60%以上をiPhoneに依存しているので、市場成熟のなんらかの影響をうけます。

そして年初に、昨年9月に発売した「6s/6sプラス」の1~3月期の生産量を、計画に比べ3割程度減らす見通しだというニュースが流れました。発売当初の好調が維持できなかったようです。
アップル、最新iPhoneを3割減産 1~3月 :日本経済新聞

iPadは前年割れ、スマートウォッチや新しいアップルTVは、アップルの経済圏を広げ、さらに顧客を囲い込むには役だったとしても、今や巨大となったアップルにとっては、事業の柱、成長エンジンにはなりません。

市場のステージが、成長期から成熟期に移ると、競争も激しくなってきます。販売数量とシェアの伸びがなければ利益がでない「規模の経済」に縛られている韓国や中国のアンドロイド・スマートフォンのメーカーは死活問題になってきます。競争の視点で見れば、「独自の経済圏」にユーザーを囲いこんできたアップルがもっとも有利だとしても、その影響を受けないわけにはいきません。

そうなると、アップルに求められてくるのは、「次の成長エンジンとなる手駒があるのか」です。きっと水面下で進めている電気自動車開発プロジェクトTitanの行方にますます注目が集まり、焦点になってきそうです。グーグルがカリフォルニア州の規制で、グーグルカーの出鼻をくじかれましたが、アップルはどこまで開発が進んでいるのでしょうか。

ただ、ジョブズがいないアップルにほんとうに自動車の常識を塗り替える再発明ができるのかは少し疑問が残ります。ますます高度化し、専門化し、ソフトとハードが融合してくればくるほど、イノベーションをプロデュースするリーダーの高い資質が求められてくるからです。 それについては、VIDEO SQUAREに寄稿したコラムを参照ください。
マーケティング・プロデューサーの時代 | VIDEO SQUARE