甘利大臣辞任でもTPPはきっちりと審議を --- 松田 公太

昨日の17時に行われた会見で突如発表された甘利大臣の辞任。

会見では自身の問題と秘書の問題について説明がなされましたが、真相は不明確のまま。本当に甘利氏の秘書に対する監督責任だけの問題なのか、司直による調査も行い、真実を明らかにする必要があります。

また、最も大切なのは大臣職の引継ぎです。いつもは、儀式的で形ばかりのものが行われておしまいですが、今回はそのようなことは許されません。

甘利さんが担当していたのはTPPやアベノミクス等の重要政策。特にTPPについては、今国会での承認審査を通じて国民の理解を得なければならない主要テーマとなります。徹底的な審議が必要ですが、そのためには、大臣からきちんとした答弁がなされることが不可欠の前提です。閣僚の質問対応がお粗末だと、全く議論が深まらず、ますます国民が不信をいだくことになってしまいます。

2014年5月、集団的自衛権一部行使容認の閣議決定がなされたときの防衛大臣は小野寺さん。その後、9月に大臣に就任したのは江渡さんでした。しかしながら、江渡さんは、自身に政治資金問題が発生したため、同年12月に行われた総選挙後の第3次安倍内閣では再任を辞退し、わずか3カ月の在任期間となりました。そこで出てきたのが中谷さんだったのです。

中谷さんが後任となったとき、前任者である江渡さんは防衛大臣の仕事や集団的自衛権等について知識が深まっていなかったので、両者の間では実質的な引継ぎは行われませんでした。いつものように官僚からレクを受ければよいという考えで進められたのかもしれません。

しかし、それが安保法案審議を充実させることが出来なかった一因となっていると考えています。本来なら、あれだけ重要な防衛外交政策については、閣議決定から一貫して同じ大臣が務めるべきでした。

TPPは多くの部分が密室交渉で進められ、甘利さんのみが知っていることも非常に多くあります。しかし、大臣というのは政府の一役職にすぎませんので、もともとの担当者が辞めたからと言って、政府の説明責任がなくなるわけではありません。大臣が「自分は分かりません」などということは許されないのです。

昨日のうちに石原伸晃さんが後任者として就任しましたが、石原さんが国会答弁できちんと対応できるよう、最低でも数日かけてご本人同士で引き継ぎを行って貰わないとなりません。

今回のことでTPPがうやむやに批准されてしまうことは許されません。



編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年1月29日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。