2026年までに「復活祭」の統一を --- 長谷川 良

バチカン放送独語電子版が2日、報じたところによると、英国国教会(聖公会)のジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教は「今後5年から10年以内に全キリスト教会は復活祭を4月の第2、ないしは第3の日曜日に統一して祝うことができる新しい規約ができることを期待する」という。英国国教会通信ACNSに答えている。

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▲オーストリアのローマ・カトリック教会のシンボル、シュテファン大聖堂

同大主教によると、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王、コプト正教会のアレクサンドリア総主教タワドロス2世、そして、世界正教会の象徴的指導者コンスタンディヌーボリ総主教のバルソロメオス1世は復活祭を統一して祝う方向で話し合いをもっているという。

フランシスコ法王は昨年6月、ローマで開催された神父集会でキリスト教会の統一復活祭の決定への希望を吐露している。ウエルビー大主教は「タワドロス2世もそのような提案を支持、バルソロメオス1世とも共同祝日の設定で話し合った」と述べている。

復活祭は英語ではイースターと呼ばれ、イエスが死後3日目に復活したことを祝う日であり、イエスの誕生を祝うクリスマスとともにキリスト教会の2大祝日だ。ただし、世界に12億人の信者を誇るローマ・カトリック教会では今年は3月27日に復活祭を祝うが、正教会は5月1日に祝日を迎えるといった具合で、東西のキリスト教会では復活祭の日付が異なってきた。

「統一復活祭」案に対して、「全ての独立正教会はそのような提案を早急に支持するとは考えられない」という。なぜならば、第1ニカイア公会議(西暦325年)で地方によって違う復活祭の日付について話し合われた結果、復活祭は「春分の後の最初の満月に次ぐ日曜日」と決定されたからだ。ちなみに、時差の関係で春分の日が場所によって異なり、復活祭の日附も異なってしまうため、春分を3月21日に固定して計算されている。

東方教会(ギリシャ正教会、ロシア正教会など)は紀元前1世紀につくられたユリウス暦をもとに復活祭を計算する一方、ローマ・カトリック教会、プロテスタント教会、英国国教会(聖公会)はグレゴリオ暦で計算して復活祭の日程を決めてきた。復活祭の日付が毎年異なる移動祝日となったわけだ。なお、復活祭の日付カレンダーによると、2017年は西方教会も東方教会も復活祭は4月16日と祝日が一致する。

蛇足だが、宗派によって復活祭の日が異なれば、イエスは年に何度も復活しなければならなくなる。それにしても、復活祭の日付も統一できないようでは、どうしてキリスト教の統一ができるだろうか。復活問題でもキリスト教は肉体復活と霊的復活でその見解が分かれている。神学の統一も不可欠だろう。一旦分裂すれば、統一はなんと難しいことだろうか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年2月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。