政界に蔓延しつつある「寄らば大樹」思考 --- 松田 公太


▲日本的な「寄らば大樹の陰」の発想が政界を覆う(アゴラ編集部)


今朝、週末に読み切れなかった新聞に目を通していたところ、下記の記事が目に留まりました。

『議員引き抜き、自民触手』
自民党は、民主党の鈴木貴子衆院議員(比例区北海道)を次の衆院選で自民候補として擁立しようと、引き抜きに動いている。・・・民主幹部は「一緒にやっていきたい」と引き留めを狙うが、貴子氏はノーコメントを続ける。自民幹部は次の衆院選で、貴子氏を比例区北海道ブロックに立てることを模索する。

■無所属も次々
自民はこのほかにも、野党や無所属議員の取り込みを進めている。
・・・昨年末には、日本を元気にする会を離れた井上義行参院議員が自民会派に入った。第1次安倍政権で首相秘書官を務め、13年参院選比例区で旧みんなの党から当選。安全保障関連法の採決では賛成に回った。
自 民は今夏の参院選神奈川選挙区(改選数4)で、10年参院選で旧みんなで当選し、今は無所属の中西健治参院議員の推薦を決めた。当初は自民で2人を立てる 構想だったが1人に絞り、代わりに中西氏を支援する。同じく旧みんなから無所属となった田中茂参院議員も自民会派に入った。

衆院議員では、昨年11月に民主を離党した松本剛明元外相にも秋波を送る。自民関係者は「民主の党勢回復の芽を摘む」と狙いを語る。参院選に合わせた衆院解散の可能性もささやかれるなか、次の衆院選で自民からの擁立を模索する。(朝日新聞2016.2.5 一部中略)

記事で取り上げられた5名の内、2名が「日本を元気にする会」会派の所属議員、3名が元みんなの党。
内情を良く知っている私から言わせてもらうと、「引き抜かれた」というよりも「お願いして入れてもらった」という方が正しいでしょう。

最近は「選挙で再選(当選)したいから、出世したいから、自民党。」という流れが激しくなってきています。他党議員の多くも選挙区事情さえ許せば(つまり、 自分の選挙区内に自民党の議員や候補者がいなければ)、すぐにでも自民党に鞍替えしたいと思っている人たちが多いのではないでしょうか。

私は、この流れに恐怖を覚えます。1940年ごろは、少しずつこのような形で大政翼賛会が組織されていったのではないかとさえ想像してしまいます。

日本人は基本的に「寄らば大樹」の性格が強いので、結局は改革を実現することが出来ません。財政再建もできず、大戦や原発の時のように、誰もが「危険」と思っていながら破綻への道をずるずると突き進んでしまうのです。

先日は、SPEEDの今井絵理子さんが自民党全国比例で出馬することが発表されました。彼女の個人的な聴覚障害者支援への情熱は理解できますし、頑張って頂 きたいと思います。また、子どもの頃から芸能界で活動してきた彼女にとっては、政治は全く別の世界でしょうから、ゼロから育ててもらえそうな自民党に入り たくなるのは意味が分かります。しかし、本気でこの国の未来を憂う国会議員や知識人等であれば、自民党をこれ以上膨らますことへの危機感を持たない方がお かしいと思います。

私も改憲が必要な部分はあると兼ねてから申し上げていますが、かと言って、安保法案の時のように強引に、勢いに任せて通してしまう事があってはならないと思います。

やはり政治屋によらない真の「是々非々の政党」「しがらみの無い政党」が登場し、成長していくことでしか、この国を変えること、守ることは出来ないのです。



編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年2月9日の記事を転載させていただきました(タイトルはアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。

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松田 公太
講談社
2016-01-15