DMOとはなにか。稼ぐ地域のつくりかた --- 井上 貴至

(※アゴラ編集部注・本エントリーのテーマ「DMO」とは戦略的に観光地域づくりを行う組織体「Destination Management/Marketing Organization」の略称。米欧で普及している)

2月9日(火)虎ノ門ヒルズにて、地方創生に関する事例報告会が開かれました。

基調講演は、内閣官房まち・ひと・しごと事務局の村上敬亮参事官

僕はどうしても参加できなかったのですが、参加した方々が大興奮。「役人の講演はほとんどためにならないが、村上参事官の話はのめりこんで聞いた」とのこと。そのうちのひとり、長野県庁の若手ホープ倉根明徳さんから講演メモをいただきました。

◆「DMO作って何しますか?」

村上敬亮参事官が発した第一声はそんな言葉でした。

DMOを作りたいがどうすればいいか?という相談を受けることが多いが、何をするために作るのかを理解している人は意外に少ない。また、わざわざたくさんのライバルが存在する分野に飛び込もうとする人が多い

●肉
●オリンピック
●道の駅

正直、このキーワードを見るとため息が出る。

そんな方に「DMO作って何しますか?」「松坂牛に勝てますか?」と聞くと、え?え~あの~と明快な答えが返ってこない。 DMOが成功するかどうか、もっと具体的に言えば交付金審査上の評価の大きな分かれ目になります

基調講演はそんなお話からスタートしました。 これってDMOに限らず、行政であるあるな話だと思います。

◆手厳しいお話でスタートしたかと思えば、次に出てきたのは地元長野県の事例。

電車とバスを乗り継いだ場所から、さらに砂利道を30分歩かなければ辿り着けない秘境でありながら、年間10万人の観光客が訪れる山間の観光地。

外国人も多いが、東京を昼に出発して夕方に観光した後、また東京に戻って都内のホテルに宿泊する人が多い。

1泊5万円出すことも惜しまない外国人観光客が毎日目の前をただ通り過ぎていく。

一部では何とかしようと頑張っているがまだまだ弱い。 例えば、空いているペンションをリノベーションして1棟貸しする。夜は地元食材を使った本格フレンチ、朝もプロ監修の朝食を提供する。

それだけで、ただ通り過ぎていた外国人が1泊するようになる。こんなことをどんどん考え、実行していくことが必要だ!

◆もはや民間だな…と思っていると、続けてこれからの行政は、もっと「域外から稼ぐ」という意識を持たなければならない。

パブリック・ベンチャーをどんどん生んでいく。 とある米国DMOのトップからは、「そのために大切なのは、気の利いたやつを、5人集めて、個室で、お金の話をすることだ」と言われたという。

どこどこの会長とかそういう人にはご遠慮いただいて、とにかくやる気があって気の利いた奴を集めることが大事。 どうすれば域外から稼げるのかを考え、意味のあるDMOを作って欲しい。

正直、役人の話でためになるものはほとんどないのですが、村上参事官のお話にはのめり込んでしまいました。何より、聞いていてワクワクしました!行政だからできること、もっともっと考えていきたいと思います

以上、本日の「地方創生事例研究会報告」のレポートでした!


情報提供
倉根明徳氏

1978年生まれ。長野県小諸市出身。 長野県庁入庁後、 2013年には県庁の若手職員とともに信州イノベーション・プロジェクト(SHIP)を発足、長野市を中心に様々な地域活動を展開中。

SHIPでは、倉根さんたちに呼ばれて、私も講演させていただきました。
●続けるためには楽しむこと、楽しむためには楽をすること
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68062814.html

◆それにしても、村上参事官のお話、面白いですね。

特に、パブリック・ベンチャーをどんどん生んでいく。 そのために必要なのは「気の利いたやつを集めて、個室で、お金の話をすることだ」
これ、ほんとに面白いですね。
でも、イケてる地域は、自然と実践しているような気がします。

長野の小布施町や島根の海士町では、町長宅に町内外のセンスのいい方々が集まって、毎晩のように語り合っています。最近の長島大陸では、地域おこし協力隊の家がそういう感じになってきました。

●ぶりの町に大根大使がやってきた!
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68510379.html

これからも、長島大陸で地方創生を実践していきたいです。


<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html

<関連記事>
田舎が生き残る観光論。薄利多売からの脱却を
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68476616.html

今年度から国内唯一の旅行業界誌「トラベルジャーナル」に月1回連載しています。
そちらもぜひ読んでみてください。
https://www.tjnet.co.jp/

長島大陸では観光のプロも募集中
田舎暮らしはキャリアアップ!長島町で働く仲間を募集中。
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68471295.html


編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。