中国の米国債保有額は高水準を維持 --- 久保田 博幸

米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、昨年12月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国(China、Mainland)であり、11月から184億ドル減少はしたが、それでも1兆2461億ドルの保有高となった。二番目は引き続き日本で1兆1225億ドルとなっていた。上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)

中国(China, Mainland) 1246.1
日本(Japan) 1122.5
カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs) 351.6
石油輸出国(Oil Exporters) 292.5
アイルランド(Ireland) 264.2
ブラジル(Brazil) 254.8
スイス(Switzerland)  231.9
英国(United Kingdom) 218.3
ルクセンブルグ(Luxembourg ) 200.5
香港(Hong Kong) 200.2

昨年8月に中国人民銀行は人民元の引き下げを実施した。米財務省の為替問題議会報告によると、中国は7~9月の3か月間で2290億ドルの為替介入を実施したとされる。しかし、米国債国別保有残高の数字を見る限り、8月から9月にかけてそのための米国債の売却は行われていなかったようである。

中国人民銀行が1月7日に発表した12月末時点の中国の外貨準備高は、3兆3300億ドルと前月末時点と比べて1079億ドル減少した。減少幅は過去最大となっていたが、米国債国別保有残高を見る限り、この影響は米国債保有高にはそれほど現れていない。また、香港の米国債保有額は増加していた。

原油安による産油国の動向も気になるが、石油輸出国の米国債保有額は減少していない。ロシアはむしろ増えている。

12月時点の日本の外貨準備高が1兆2332億ドルであり、このうち1兆1790億ドルが証券となっている。12月の日本の米国債保有高は1兆1225億ドルであり、ほぼ整合する。

中国に関しては外貨準備が日本の倍以上存在しているにも関わらず、中国の米国債の保有高は1兆2000億ドル近辺で日本とほぼ並んだ状況が続いていることで、残りの2兆ドルあまりはいったい何で運用されているのか。中国の外貨準備の運用先は非公開となっており、2兆ドル以上もの資金の運用先はどこかにあるのかは明らかになっていない。


久保田博幸(くぼた ひろゆき)
1958年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学法学部卒。
証券会社の債券部で14年間、国債を中心とする債券ディーリング業務に従事する傍ら、1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。専門は日本の債券市場の分析。特に日本国債の動向や日銀の金融政策について詳しい。現在、金融アナリストとしてQUICKなどにコラムを配信している。また、「牛さん熊さんの本日の債券」というメルマガを配信中。2015年まぐまぐ大賞で資産運用部門第2位を受賞。日本アナリスト協会検定会員。

主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」すばる舎、「短期金融市場の基本がよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

「債券ディーリングルーム」http://fp.st23.arena.ne.jp/
「牛さん熊さんブログ」 http://bullbear.exblog.jp/

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年2月19日の記事を転載させていただきました。転載を快諾くだいました久保田氏に心より御礼いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。