1994年の初臨界からこれまで、順調に稼働したのはわずか4か月。1995年のナトリウム漏れ事故以来、この20年間での発電はゼロです。その間も、金属ナトリウムを温め続けるために毎日5500万円(年間200億円)もの維持費がかかっており、投入された税金の額は1兆円以上にのぼります。
民間の事業ならありえない話です。このような状態になる前にとっくに廃炉を余儀なくされているはずですし、推進してきた取締役などは株主代表訴訟による責任追及を免れません。
もんじゅがこのようになってしまった最大の原因は、一言でいってしまえば日本の政治には経営感覚がなく、責任の所在も曖昧だからです。チャレンジングなプロジェクトを始めるとき、リスクマネジメントの一環として、撤退の基準とその判断を行う責任者を決めておき、引き際を見誤らないようにするのは当然です。また、当初の予測を大幅に下回る成績のときには、その時点で撤退戦略を練り上げます。
ところが、もんじゅは、国益に適うという大義名分の下、誰も中止を真摯に検討することなく杜撰な計画が進められてきました。高速増殖炉は、高速中性子による核分裂の連鎖反応により、核分裂エネルギーを生み出しながら、消費した燃料以上の新しい核分裂性物質をつくりだす夢の原子炉だとして、もてはやされ続けたのです。
現在では、高速増殖炉の計画は無理をしてまで進めるべきではないというのが他の先進諸国の判断です。
米・英・仏・独では、すでに中止されています。その理由は様々ですが、実用可能性、経済性の観点から合理性が乏しいというのが最大の要因でしょう。
はたして、日本でこれ以上、現在の計画にこだわるべきなのでしょうか。
私はそうは思いません。
もんじゅはトラブル続きで、昨年11月には、原子力規制委員会から運営主体を日本原子力研究開発機構ではなく他の組織に移管すべきだという厳しい勧告も出ています。まともな稼働が見込めない以上、サンクコストの呪縛を振り切り、思い切って廃炉にする決断をすべきです。
そうしなければ、ますます損失を増やし、国民負担を大きくしていくだけでしょう。
日本は3・11を経験し、原子力政策を大きく変更させました。原発の新増設はしないとことになっています。そのような状況でも、高速増殖炉が必要なのか、ゼロ・ベースで見直し、未来志向の思い切った判断をすることこそが、政治家に課せられた使命だと考えています。
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年2月23日の記事を転載させていただきました(写真は公式サイトより、アゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。
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