昨年末に日本で過去最高金額のマンションが販売されました。三井不動産レジデンシャルが売主になる「パークコート赤坂檜町ザ・タワー」で、場所は東京ミッドタウンの隣。地上44階建ての超高層タワーマンションです。
これまでの東京の最高金額マンションとして有名だったのは広尾にある「ザ・ハウス南麻布」です。2003年に売り出された時の価格が約425㎡で13億円。さらに2004年にはフェアモントホテルの跡地に「パークマンション千鳥ヶ淵」が約335㎡で同じく13億円で売り出されたそうです。
今回の六本木の物件は、販売住戸の平均坪単価が1000万円と今までの記録を軽く超えています。そして最高額の15億円の部屋は北向きの44階。東京ミッドタウンの檜町公園が一望できるビューが最大の魅力で、広さは約203㎡だそうですから、坪単価は2000万円以上という計算になります。
このような超高額マンションがほぼ完売になっているということは驚きですが、購入しているのは外国人ではなく日本人の超富裕層がほとんどのようです。
このマンションの価格は果たして適正なのでしょうか。それとも割高なのでしょうか。見方によってその結論は分かれると思います。
近隣の賃貸相場から見ると割安感はありません。例えば、東京ミッドタウン内にあるレジデンスの賃貸物件の賃料は㎡あたり1万円/月前後です。坪単価1000万円で購入したとすると、同じ家賃が取れたとしてグロス利回りで4%以下ということになります。
最高額の部屋になると、利回り4%から逆算しても家賃が月500万円くらいにならないといけない計算です。そこまでの家賃は取れないでしょうから、現状の利回りを前提とした投資対象としては、価格は割に合わないと言えるのです。
しかし、別の見方もできます。例えば、世界の他の都市と比較すると東京の不動産価格の割安感が見えてきます。
以前に資産デザイン研究所メールでもご紹介しましたが、日本不動産研究所が発表した「第4回 国際不動産価格賃料指数(2015年4月現在)」によると、高級マンションの価格比較で、東京を100とした場合、ロンドンは3.3倍、香港は2.3倍、ニューヨークは1.7倍、シンガポールは1.4倍。世界の金融都市と国際比較してみると東京の割安感が目立ちます。
<高級マンション価格水準の国際比較>
ロンドン 330.0
香港 234.9
ニューヨーク 175.8
シンガポール 144.1
東京 100.0
不動産は物件の個別差が大きく、一般的な傾向を知るための参考値のようなものですが、大まかな傾向はわかります。
例えば、マンハッタンのセントラルパーク沿いのコンドミニアムになると、築年数が古い物件でも一部屋数10億円といったものが珍しくなく、それと比較すれば東京ミッドタウンが一望できる新築物件の最上階が15億円というのは高いとは言えないことになるのです。
都心の利便性と東京ミッドタウンの借景という静けさの両方を得られる土地には、極めて高い希少性があり、今後同レベルの物件の登場は期待しにくいと思います。限られた好立地の高級コンドミニアムを購入したいという人にとっては、現時点で多少価格が高いと感じても、将来の需要から考えれば購入しても損はしないという判断もあるのです。
この価格帯になると、利回りや㎡単価を他物件と比較するといったレベルを超えています。相対的な比較ではなく、ピカソやゴーギャンの絵画を買うような感覚に似た、一点ものの絶対的な価値判断です。物件に魅力を感じ、それにお金を惜しげもなく払える人が購入していると思われるのです。
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※内藤忍、株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年3月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。