CNBC恒例、米連邦公開市場委員会(FOMC)直前のFedサーベイでは、FF金利先物動向と同じく利上げ開始時期の予想平均値が年明けに後ろ倒しされていました。42名のエコノミストをはじめストラテジスト、マネー・マネージャーなどを対象に3月10〜11日に実施した結果をみると、次回の利上げ予想平均値は2016年6月へ後ろ倒しされています。その他、気になる内容は、以下をご笑覧下さい。
1)3月FOMCで利上げ開始を決定するか
・イエス 5%
・ノー 95%
2)次回の利上げ時期平均
・6月 90%(前回は5月で88%)
・10月 10%(前回は8月で10%)
・量的緩和(QE)実施 ゼロ%(前回は4月で3%)
・マイナス金利導入、ゼロ%(前回もゼロ%)
3)年内の利上げ回数
・1.9回<前回1月は2.1回、2015年12月は2.8回
4)利上げ開始時期、予想平均値
・2016年3月、前回9月は2015年11月
5)マイナス金利は効果的か
・成長を促進する イエス 23% ノー 63%
・インフレを上昇させる イエス 31% ノー 54%
・問題を増やす イエス 70% ノー 18%
・欧州中央銀行の緩和策を採用するか イエス 37% ノー 54%
6)2016年と2017年、それぞれの年末FF金利予想値
・2016年末 0.84%<前回は0.88%、調査開始以来で最低
・2017年末 1.60%<前回は1.62%、調査開始以来で最低
7)Fedの利上げ終了着地点
・2.73%、2015年8月以来の高水準>前回は2.56%、調査開始以来で最低
8)今回の利上げサイクル終了時期平均値
・2018年7-9月期<前回は2018年4-6月期
9)イエレン議長、フィッシャー副議長のFF金利予想
・イエレン 2016年)0.98%、2017年)1.90%、2018年)2.76%、長期的予想)3.16%
・フィッシャー 2016年)1.12%、2017年)2.15%、2018年)3.02%、長期的予想)3.36%
10)バランスシートを縮小する時期・予想平均値
・2017年2月、調査開始以来で最長<前回は2016年1月
11)大統領予備選動向の影響
・ポジティブ 5%
・ネガティブ 56%
・影響なし 39%
12)大統領選、本選でどちらが勝利すれば有益か
・民主党 18%
・共和党 40%
・関係なし 26%
・分からない 16%
13)どの大統領候補が最適か(それぞれ順に経済、株式市場にとってベストと回答した数字)
民主党候補
・クリントン 16% 22%
・サンダー氏 0% 0%
共和党候補
・ケーシック 42% 39%
・トランプ 13% 14%
・ルビオ 8% 11%
・クルーズ 11% 0%
※ルビオ候補は3月15日のミニ・スーパーチューズデーで撤退を表明。
共和党支持派が多いウォールストリートは、ケーシック候補がお好き。
(出所:CNBC)
14)GDP見通し
・2016年 2.14%、調査開始以来で最低<前回は2.17%
・2017年 2.41%>前回は2.31%、調査開始以来で最低
15)CPI見通し
・2016年 1.72%>前回は1.50%、調査開始以来で最低
・2017年 2.24%>前回は2.07%、調査開始以来で最低
16)S&P500見通し
・2016年12月末 2,088>前回1月は2,035、2015年12月は2,000と調査開始以来で最低
・2017年12月末 2,200>前回1月は2,158、2015年12月は2,107と調査開始以来で最低
17)米10年債利回り
・2016年12月末 2.34%、調査開始以来で最低<前回は2.51%
・2017年12月末 2.83%、調査開始以来で最低<前回は2.88%
18)米国にとって最大の脅威は?
・1位 世界経済の減速 33%<前回は44%
・2位 税制変更/規制強化 21%>前回は10%
・2位 その他 21%<前回は23%
19)米国、1年以内の景気後退入りリスク
・24%<前回は28.8%、2011年12月以来で最悪
20)最大の関心事は?
・経済 48%
・その他 23%
・株式 18%
・債券 13%
・為替 0%
――いかがでしたか?米大統領選をめぐり、ウォールストリートはケーシック候補の人気が高いことが明らかとなりました。同候補はミニ・スーパーチューズデーで州知事を2期務めた経歴そのままにオハイオ州で勝利し、予備選では首の皮一枚残す状況。撤退を表明したルビオ候補の支持がケーシック候補に流れるのか、注目されます。しかし、トランプ米大統領の誕生が経済、株式市場にとって「ベスト」との回答を確認した点は、サプライズでした。
マイナス金利への効果には、懐疑的な様子が伺えます。フィッシャーFRB副議長が講演で表明した「マイナス金利よりQE」とのスタンスが浮かび上がりました。
Fedの政策は利上げ回数、バランスシート縮小、利上げ終了着地点とそろって予想がハト派寄りとなりました。世界同時株安を乗り越えたことも重なり、S&P500見通しの上方修正を促しています。景気後退の予想も低下し、ウォールストリートには楽観ムードが広がりつつあるようです。
(カバー写真:Ronaldo Lima, Jr./Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年3月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。