安田さん誘拐を巡る“ジャーナリスト”たちの思い込み

池内 恵

常岡氏、「犯人側は手詰まり」=安田さん動画公開、身代金狙いか

301 Moved Permanently

時事通信社 2016/03/17

常岡さんの言っていることは正しいと思う。

日本の「ジャーナリスト」や作家の多くは、なぜかこの問題を安田さんと日本政府の間の問題だと思い込んでいる。そうではない、安田さんと誘拐犯の間にこそ、長期間の交渉が行われている。

日本政府は救出に最大限努力しなければならないが、シリア北部から一人の人間を安全に連れ戻せる国は現在、地球上にない。シリア北部に敵対勢力がいれば空爆で殺してしまう国は、アサド政権や米露仏を含めて数多くあるが、日本はそのような国ではない。

重要なのは、安田さん自身が誘拐犯と向き合っているということであり、安田さんが誘拐犯を説得して解放されるのが、良い結果をもたらすための最も可能性の高い方法であって、それを邪魔してはならない。「安田さんが金になる」という誤解を誘拐犯に与える限り、安田さんは帰って来ない。

金にならないからといって人殺しをすれば、誘拐犯は非難され、いっそう孤立する。「手詰まり」というのはそういうことです。

ikeuchi
池内恵・東京大学先端科学技術研究センター准教授


編集部より:この記事は、池内恵氏のFacebook投稿 2016年3月18日の記事を転載させていただきました。転載を快諾された池内氏に御礼申し上げます。