増税を再延期するなら、軽減税率も白紙にするべき

松田 公太

安倍総理が消費税増税先送りの検討に入ったとの報道が流れ始めました。ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授が来年春の消費増税の先送りを提言したことを受けてのことのようです。

これまでの予算委員会では、「リーマンショックや大震災のような事態が起きない限り、消費税の再増税を延期しない」との答弁を繰り返してきました。

私はそれに対して3月3日の予算委員会で「リーマンショック級の経済恐慌が起こってしまったら、焼け石に水状態になってしまう。そんな状況で消費税を2%上げるのをやめるといってもプラスの影響は出てこない。」と強く提言をしましたが、それに対しては総理も頷いていたように見えました。(その時の記事はこちら です)

明らかに風向きが変わってきました。そもそも、上記のような報道が少しずつ流れる時は、世論の反応を確認したり、地ならしをする為に「話を漏らしている」ケースがほとんどなのです。

「消費税増税は、デフレ脱却と、景気の回復が明確になるまで、絶対にやるべきではない」。2010年の出馬時から言い続けてきました。前回の増税で、大きな痛手を被った日本の経済。今回も延期になるのであれば、「話が違うじゃないか」と批判するよりも、それを素直に評価したいと思います。

ただ、再延期の検討に入ったのであれば、現在参議院で審議中の「所得税法等の一部を改正する法律案」も見送るべきです。

それによって導入しようとしている軽減税率制度は、本当に様々な問題があり、まだまだ審議しなくてはならない点が山のようにあるからです。

二日前の予算委員会(これはNHK中継がない委員会でした)でも質問しましたので、以下、その時に取り上げた点をひとつだけ説明させて頂きます。

一言でいうと:
「テイクアウトでもイートインでも税込み価格は一緒にします」という方針をとっても許されるのか?というもの。

海外の事例を見ていますと、持帰りと店内飲食で適用税率が異なるにもかかわらず同じ税込み価格で販売している、という例があるのです。たとえば、ハンバーガーセットを、テイクアウト(8%)でもイートイン(10%)でも同じ税込み価格1000円で売る、ということが行われているのです。

その理由は、「持帰りといって購入し、店内で食べる」というお客様が増えてしまったことから、税当局とのトラブルを避けるためというもの。

前回の質問で取り上げたように 、深く考えずに「得をしよう」と嘘をつく人が出てきてしまうのは、十分に想定されます。しかし、そのような方が多くなった場合、「納税額を低くするためわざと見逃しているのではないか」等の疑惑をもたれかねません。

「だったら、税込み価格を一緒にして、嘘をつく必要を無くしてしまおう」と考える経営者が日本に出てきても不思議ではありません。

ただ、この方法ですと、そもそもの商品の本体価格(税抜き価格)が違ってきますので、①消費者間の不平等ではないか、②税徴収上の問題が出てくるのではないか、③テイクアウトの人にとって「痛税感の緩和」にならず法改正の趣旨に反するのではないか等の問題が出てきます。

そこで、こういうやり方が認められるのか、麻生財務大臣と河野消費者行政担当大臣に尋ねました。

麻生大臣
「基本的にはテイクアウトとイートインとではその費用構造とか顧客のニーズとかいうものは異なりますので全く同じ商品であるとは限らないということですから、合理的ないわゆる経営判断として、税抜き価格は異なることが行われることは、これはあり得ると思いますが、直ちに問題になると考えているわけではありません」
「日々の食料品の買物全体を通じて見れば、痛税感の緩和を全体としては実感できる仕組みだと思っております」

河野大臣
「御指摘のような場合、直ちに消費者の不利益になるとは考えられません。ですから、一律に駄目ということにはならないと思います。」

このように、政府の見解は、「税率が違うのに税込み価格を同じにしてもよい」というものでした。

しかし、これでは軽減税率を適用する根本的なメリットがないのではないでしょうか。本当に低所得者対策として有効なのか、事業者、特に中小企業に多大なる負担をかけてまでやる意義があるのか、疑惑は解消されるどころか深まる一方です。

やはり、税の公平性も簡素性も打ち崩すような、あやふやな軽減税率は廃止にするしかないのです。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年3月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。