疑問に感じるメディア報道-ショーンK氏の復活を期待

尾藤 克之

ショーンK氏とは約10年ほど前に某コンサルタント専門サイト主催の会合で会ったことがある。いまほどメディアの露出は多くは無かったものの、頭脳明晰な語り口や物腰の柔らかい姿勢からは将来の飛躍を誰もが予感したほどである。同年代でファーム出身ということもあり話が盛り上がったことを覚えている。

●疑問に感じるメディア報道

実は今回の報道には大きな疑問を感じている。著名なコメンテーターといわれている方々が揃ってメディアを通じて批判に転じていることだ。過去の、ロゴマークの佐野氏しかり、佐村河内氏、小保方氏、ベッキーなど。ウイークポイントを見つけるとよってたかって叩く。反論や反発をすれば「生意気である。反省が無い」として叩かれる。

なにか揚げ足をとれそうなネタがあれば叩く。目立つもの、なんらか活躍しているもの、叩かれる。ネットでも陰湿なくらいに叩かれる。そのときに感じたのが、自分が満たされていないから人を叩くしかないのかなと。誹謗中傷しても匿名だから分からないし構わないよねと。まさにパワハラである。このような風潮をとても危険だと感じている。

また、多くのコメンテーターの発言を聞く限りコンサルタントの仕事を誤認している。コンサルタントと聞くとあまり良い印象をもってもらえないことがある。脱税や金銭がらみ事件にはコンサルタントやコンサルタント会社が絡んでいることが多いからだ。

2001年に発生した米国のエンロン事件もコンサルタント会社が絡んでいた。エンロンは成長過程で粉飾決算を繰り返しており160億ドル以上の負債を抱えて破綻する。事件に関与していた大手監査法人のアーサー・アンダーセンも解散に追い込まれた。世界的にコーポレートガバナンスが重視されるようになった契機の事件でもある。

●コンサルタントはアンビバレントである

一流といわれるコンサルタントは、詐欺師的でありアンビバレントな雰囲気を兼ね合わせている。それは当然だ。企画書、いやドキュメント数枚で経営者を説得し合意形成をしなければいけないからだ。ビジネスパーソンの究極のプレゼンテーションの姿でもある。

また「コンサルタントは責任をとらない」「最後まで仕事をしない」と揶揄する方も多い。その多くは根拠のない誤認である。コンサルタントに対する任命権は多くの場合、会社経営者である。そして経営者とコンサルタントの間で発注内容とNDA(守秘義務契約書)がミックスされた契約書が交わされることが多い。

発注内容は、ある目的や成果を達成したら株式を譲渡するとか、当該事業を別会社化し支援するとか、商品化するとか、役員合流を承認するなど様々である。経営者との「握り」であるから簡単には他言はできない。場合によっては、プロジェクト終了後も守秘義務を遵守するような内容のものも少なくない。

「コンサルタントは責任をとらない」「最後まで仕事をしない」という情報を耳にしたら当該事業は頓挫(上手くいかなかった)したと判断することができる。だから役員や上席管理職たちが揶揄しているに過ぎないことが多い。彼らからしてみれば、経営者が握ったコンサルタントは自らの地位を脅かす危険な存在だから揶揄するしかない。

今回の報道も同様だろう。多くのメディア出演者は、ショーンK氏に脅威を感じていたのではないか。飛ぶ鳥を落とすように著名な番組に出演しレギュラーの座を射止めるショーンK氏に嫉妬を感じていたのではないか。彼らは自分の経歴や実績を盛ったことはないのか?しかも公務員や議員などのように公務についているわけではない。自分のことを棚に上げて他人をバッシングすることは極めて稚拙な行為であり看過できるものではない。

●コンサルタントの対人影響力というスキル

しかし経営者はなぜ、コンサルタントに命運を任せるのか。何に価値を感じるのか?私は一流のコンサルタントが持ち合わせる要素を一つあげろといわれたら「対人影響力」ではないかと思う。「対人影響力」は一般的ビジネスパーソンに必要とされる人間関係構築力、状況判断力、組織感覚力などを凌駕するからだ。

少々表現が悪いかも知れないが「対人影響力」の強い人を組織にいれることで、水槽にいれたピラニアに近い存在になることを期待する場合がある。静かで消極的だった組織が一気に騒がしくなるだろう。経営者は組織に安泰の確証がないことをよく知っている。永続的に発展するには、安泰であっても常に変革の必要性に迫られていることを知っているのである。

ショーンK氏は次の手を考えていることだろう。今回の件を虚心坦懐に受け入れたうえで、次の一手に期待したいと思う。

尾藤克之
コラムニスト