iPhoneSEでアップルは普通の会社になった

アップルはライバルとのシェア争いよりも、顧客に最高の価値を提供しファンにすること、またファンを広げるマーケティングを行ってきました。まさにジョブズが語ったように「当社には2500万人の忠実なMacの顧客がいる。当社の関心事は、第一にこの人たちがハッピーかどうか、第二に顧客が増えているかどうか、第三が市場シェアだ」がアップルのマーケティング・スタイルだったのです。
Appleのジョブズ氏、市場シェア対策やRealNetworksとの一件を語る – ITmedia ニュース

アップルは、シェア争いを回避し、独自の経済圏に顧客を囲い込んできた結果、スマートフォンのビジネスで業界利益のほとんどを独占することになりました。

しかし、状況が急変してきています。アップルの最大事業の柱、スマートフォン市場がこれまでの対前年伸び率が2桁の成長のステージから、1桁の成熟ステージに移る可能性が極めて高くなってきたのです。アップルの最大のライバルのサムスンのモバイル事業は、すでに2013年をピークに2年連続で出荷台数を落としています。
ドイツ銀行のアナリストがIDCの調査結果をもとに作成した、スマートフォン市場全体の対前年伸び率とiPhoneの伸び率を比較したグラフが”iPhoneMania”で紹介されていましたが、iPhoneの売上伸び率は市場の伸び率に連動していることがわかります。つまり、アップルといえども、市場の成長鈍化の影響を受けそうです。

iPhone売り上げ、実はスマホ市場全体よりもパフォーマンスが悪かった!? –

しかももっと悲観的なデータがあります。成熟してきたスマートフォン以外の事業がお世辞にも育っておらず、この2年を見ると、アップルの売上に占めるiPhoneの比率がむしろ上昇してきています。

そのタイミングでのiPhoneSEのリリースです。確かに画面サイズが4.7インチのiPhone6S、5.5インチのiPhone6S Plusに、iPhone5Sと同じ4インチのiPhoneSEを投入すれば、ラインアップでシェアを伸ばすこともできる可能性がでてきます。

しかもiPhone6Sが6GBで86,800円ですが、iPhoneSEは52,800円と、iPhone5sよりも価格を下げています。こちらもシェアを取ることを狙っているのでしょう。

決定打が手持ちのiPhoneや他社品のスマートフォンを買い取るサービスを始めたことです。まるでキャリア間の顧客争奪争いみたいです。

つまりイノベーションによって、市場を生み出すことで成長してきたアップルが、これといったイノベーションが生まれず、また動画ストリーミングや成長市場のクラウドコンピューティングでも遅れをとってきたために、当面の成長はiPhoneのシェアアップで成長を持続させようとしているかのように見えます。

先のことはわかりませんが、ビジネス・ジャーナルの連載でも触れたように、アップルがリードする時代の終わりが近づいてきており、iPhoneSEはその歴史の道標となるのかもしれません。
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