【映画評】バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

渡 まち子
バットマンは、両親の殺害現場を目撃したという幼少期のトラウマから悪を憎み、昼は大企業のトップ、夜になるとゴッサム・シティに横行する悪を制裁する日々を送っている。一方、クリプトン星からやってきたスーパーマンは、最愛の女性ロイスを心の支えに、人類のために持てる力のすべてを注いでいる。だがスーパーマンの驚異的な力はいつしか人類の脅威となり、人々からバッシングを受けることに。この事態を受けて、スーパーマンに対抗できる唯一の存在として、バットマンが民意を背負って、表舞台で戦うことになる…。

DCコミックスを代表する2大ヒーローが激突するアクション大作「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」。正義の象徴であるスーパーマンが悪に染まるというから、これはただごとではない。人知を超えた能力を持つスーパーマンに対し、人間であるバットマンは知力と精神力、財力にもモノを言わせて、対スーパーマン仕様の強力武器を開発して挑むという展開だ。内容については、ネタバレ禁止の厳しいお達しが出ているので、明かすわけにはいかないが、アメコミファンならずとも見逃せない大作であるのは確かである。人類を助けるため、スーパーマンはその超人的能力を駆使して戦うが、彼が戦うとその被害は甚大で犠牲者も多くでてしまう。さらに彼が地球にいることで、宇宙からの侵略者を呼び寄せてしまう恐れもある。これらがスーパーマンを敵とみなす理由だ。

人は自分に理解できないものを敵視する。さらにそこに、彼の強大な力をわが物にしよう企む人物が登場する展開は、もはや歴史の必然のよう。闇に紛れて戦っていたバットマンが表舞台に登場すること、異星人VS人間の究極の戦いなど、興味はつきない展開だが、なんといってもビジュアル派のザック・スナイダー監督らしい、スタイリッシュでド派手な映像が、たまらなく魅力的だ。それにしても本作に登場する女性は、皆、芯が強い。スーパーマンの恋人で新聞記者のロイスは、相変わらず恐れ知らずだし、謎の美女ワンダーウーマン(演じるのは「ワイルドスピード」シリーズにも出演していた元ミス・イスラエルの美女ガル・ガドット)が満を持して降臨するシーンには胸が躍る。なぜ戦うのか。スーパーマンもバットマンも、共に自分の存在意義を常に自問しているが、この答には、悪を憎む心と共に無償の愛があるのだ。
【70点】
(原題「BATMAN v SUPERMAN: DAWN OF JUSTICE」)
(アメリカ/ザック・スナイダー監督/ベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、エイミー・アダムス、他)
(大喧嘩度:★★★★★)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年3月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。