NHKの政治的公平性(予算委員会)

松田 公太

昨日の予算委員会では、放送局の政治的公平性と独立性について取り上げました。

最近「停波」が論議を呼んでいますが、私はそもそも放送局に「政治的公平性」を求めるのは難しいと思っています。

例えば米国ではTV局のNBCやCBSは民主党寄りで、FOXは共和党寄りだということは周知の事実になっています。つまり、視聴者がそれを理解したうえで番組を見ているのです。その方が、こっちの意見は聞いたけど、こっちの意見も聞いてみようと、両サイドの視点を持つことができるようになります。視聴者のリテラシーが高まることにも繋がります。今の日本のようにマスコミが、立場を明かさずに世論を誘導しようとする方が不健全なのです。

しかし、仮に日本がアメリカのようになるとしても、一つだけそれが許されない放送局があります。それは「公共放送局」であるNHKです。国民の受信料によって成り立っているNHKは放送法15条にも明確に「公共の福祉のため」と書いてあります。
絶対に「公平」でなくてはならないのです。

そのNHKが3月14日の予算委員会(こちらの記事もご覧ください→http://ameblo.jp/koutamatsuda/day-20160315.html )で、私の作成したパネルだけ、写さない(アップしない)という事態が発生しました。

核燃料サイクルに関して、非常にコントラバーシャルな議論をさせて頂いておりましたので、本来は視聴者の皆さんに同時進行でそのパネルに書いてあることを見て欲しかったのですが、全く字が分からないという状況でした(事務所にも「パネルが読めない」との抗議電話が数多くありました)。

気になって、その日の質問を全員分調べてみましたが、何故か私のところだけ、パネルがクローズアップされていなかったのです。(タテ置きのパネルもありましたが、それでさえ、しっかり文字が読み取れる形で撮影されていました)

「全員分、最もクローズアップされている状況のものです」

「40インチの高画質TVで見ても、全く文字が読めませんでした」

パネルをアップで写さないことは、過去の予算委員会でも見たことがありませんでした。
しかも、私はパネルを約11分間も出していたのです。

NHK籾井会長からは「(中略)こうして比較して出されますと私は返す言葉もございません。特定の政党のパネルだけが小さくなるということがないように、我々としては最大の努力を致します」とお詫びの言葉はありましたが、これが何故起こってしまったのかは、答弁頂けませんでした。

このことは実は本当に大切な問題です。こういった恣意的な不公平は、塵も積もれば山となるのであり、メディアのコントロールに繋がってしまうからです。芽が小さいうちから対処していく必要があります。

放送における政治的な公平性は大きな論点です。民主主義の健全な発展という観点からもしっかりと議論していく必要があります。

もっとも、日本において検討しなければならない点は、それだけではありません。そもそも、政治的な「独立性」の確保が不十分で、放送事業者に対する政府の法律上・事実上の影響力が強すぎるのではないかという問題もあります。

NHKを含め放送各局については、総務省、つまり政府そのものが免許の権限と規制の権限を有しているわけですが、これでは委縮する可能性が出てくるのも無理はありません。
「表現の自由」、「知る権利」、「報道の自由」をしっかりと確保するためには、ほかの先進 民主主義 国家と同じように、少なくとも規制権限については、政府から独立した組織がこれを行使するような形に改正するべきなのです。

日本の「報道自由度ランキング」は61位と、先進国では最下位になっています。この数字と真剣に向き合い、もう一度根本から考え直していく必要があります。

放送のあり方、それに対しての政府の関与の仕方について、皆さんも是非関心をもって頂ければと思います。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会代表)のオフィシャルブログ 2016年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。

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松田 公太
講談社
2016-01-15