BP、クウェート石油と協力契約締結

岩瀬 昇

原油市場は1月の底値26ドル台から2ヶ月間ラリーを続け、40ドル前後まで約40%値を戻し、さてこれからどちらに向かうのか、人々の関心を集めている。

FTも3月29日(火)、ヘッジファンドが価格上昇に賭け、記録的な水準にまでロングポジションを積み上げていると報じていた(”Hedge funds bet on higher oil prices” 29th March 2016, 5:10pm)。この記事によると、ヘッジファンドはICE(ブレント原油)で3億6,400万バレル、NYMEX(WTI)でも2億1,500万バレルのロング(買い越し)を積み上げているそうだ。一方で、ヘッジファンドが利食いのため売り始めたら、価格はすぐに暴落する、と判断するむきもある、とも伝えている。

4月中旬に予定されている産油国ドーハ会議の行方や、ナイジェリア・デルタ地帯の治安悪化による生産阻害、あるいはシェール業者が積極的にヘッジに出ていることの意味など、判断に迷う材料が多すぎるようだ。

ただ間違いなく言えることは、依然として供給量が需要量より大きく、在庫の減少は始まっておらず、リバランスへの道は遠いということだ。

さて、相場の方向性が見えない中、今日3月30日(水)にBPが国営のクウェート石油(KPC)と石油、ガス、LNGのトレード、あるいは石油化学など、クウェート国内のみならず全世界を対象にした協力契約に締結した、というニュースが飛び込んできた。

BPのプレスリリースによると、社長のボブ・ダドレーがKPC社長のニザール・モハマッド・アル・アドサニとクウェートで協力契約に調印した、クウェート国内の石油・ガス開発のみならず、海外の石油・ガスプロジェクトも共同で取り組んでいく、さらにはLNGのトレードや石油化学でも共同で事業を行う、とのことだ。

ボブ・ダドレー社長は「BPは1930年代に巨大ブルガン油田を発見して以来クウェートにコミットしており、いまブルガン油田の寿命を延長すべくここにいる」と発言している。

この契約の具体的成果が、いつ、どこで、どのような形で出てくるのかは、時間がたたないと判明しないのだろうが、筆者はこの契約の持つ意味は大きいと判断する。

地下に膨大な石油、ガスの資源量を抱えている産油国が、自分たちの資金力と技術力には限界があり、より有効に活用するためにはスーパーメジャーの協力が必要だ、ということを認識した現われではないか、と考えるからだ。

もちろん、イラン、イラク、サウジと周囲に大国を抱える小国・クウェートだからこその生き残り策だとも言えるが、各国にはそれぞれ独自の事情がある。

経済制裁が解除されたイランが望んでいるのも同じことだ。目先の収入につながる生産量、輸出量の増加も大事だが、長期的には地下に眠る石油・ガスを有効利用するために、外資の参入が必要なのだ。

憲法に反しない形で、なおかつ保守派の考え方をも包含しつつ、どのような契約内容にすれば資金力と技術力をもった国際石油会社がイランの石油・ガス産業への投資してくれるのか、テクノクラートが真剣に考えていることだろう。

また、かつて「ガス・イニシアチブ」と名づけて、天然ガスの国内開発にスーパーメジャーを参画させることを企図した経緯があるサウジも、何か方策を考えてくるのではなかろうか。

価格が低迷している中で、このような動きが出てくることは非常に興味深い。

化石燃料の時代はしばらく続くのだろうな。

 


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年3月31日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。