仕事で責任をなすりつける上司と上手く対峙するには

上司と部下の関係性は組織マネジメントを語るうえで欠かせません。また部下の多くは上司との人間関係性に悩み、上司も扱いづらい部下に思いわずらうものです。社内のマネジメントやルールにうるさい会社であれば、上司を飛び越えればそれ自体が越権行為と見なされますから部下ははけ口がなく追いつめられていきます。

●よくある社内のあれこれ

組織内で問題が生じたときに責任をなすりつけはどこの会社でもあることだと思います。例えば上司が新規事業を推進する立場の場合、実務は部下が担当することになります。進捗や結果が芳しくない場合、上司と部下が責任をなすりつけあうことはよくあることです。

一般的な上司は、このような場合、役職者としての最大限の権限を行使してきます。責任を早めに明らかにして部下の責任を明らかにして処分をおこなえばよいのです。このようなとき、上司の手法は強権です。部下が責任を認めるまで何時間も詰問をしたり、罵倒の限りをつくす上司もすくなくありません。部下が追い詰められて少しでも謝罪の意志をみせたらしめたもの。新たな担当をアサインしてリカバリーにつとめれば自らの保身が可能です(いまでは重大なパワハラ事件になるかも知れませんが)。

一方で、部下に全権を任せている場合は、上司はプロジェクト全体が見えていませんから、部下が適当な報告をしても内容の良し悪しが把握できません。当然、成果はあがりませんがプロジェクトの事前把握ができていないため、上司は対策を講じることができません。このような上司は、部下に責任を押しつけられる危険性が高まります。

これが外部のお客様から受託した仕事だと更に深刻な事態が発生します。社外プロジェクトの場合、業績に直結しますからプロジェクトの進捗は非常に重要です。業績が堅調な部門は、スケジュールに無駄が無く、実務内容も理にかなっているものです。

一方で業績が悪い部門はスケジュールに無理が生じて、できもしないプロジェクトを受託してしまう場合があります。できもしないというのは、本来であれば1000万円の受託が妥当なプロジェクトであるものを、仕事が欲しいばっかりに500万円で受託してしまうようなことを指します。スケジュール、コストが、実質半分になるわけですから、その部門に所属している社員は疲弊していきます。

●上司の上司との関係性を強化しろ

さて数年前に流行語大賞にもなった「倍返し」ですが、いくつかの要件が揃うことで上司に仕返しをすることは可能です。

例えば、鈴木課長と、鈴木課長の上司である井上部長との関係性が悪いケースでは、何か問題が発生した場合に、井上部長は、鈴木課長を守らない可能性があります。もし、鈴木課長の部下であるあなたが、井上部長に気に入られていれば、冷や飯を食わされることはないでしょう。鈴木課長と井上部長の関係性がよい場合は、企んでいる人間が梯子を外されてスポイルされるので要注意です。

しかし、社内のマネジメントやルールにうるさい会社であれば、あなたが井上部長に相談することは越権行為と見なされますから注意が必要です。

「君は鈴木課長の指示を聞かないそうだね。いい加減にしたまえ」
「それは、君と鈴木課長との問題だ。僕が関与する問題ではない」

告げ口をしたと見なされてこのような状況に陥ることが想定できます。社内では役職者が人事権や裁量権を持っています。そのことを充分に理解したうえで、上司の上司に気に入られなくてはいけません。

やり方は簡単です。顔を合わせたら挨拶をする、また廊下ですれ違ったら挨拶をする。これの繰り返しです。ある程度、顔を覚えてもらって親しくなったら、普通にメールを送信するなどしながら情報を提供すればよいのです。

組織では上位役職者になるにつれて情報が入りにくくなり、入ったとしても事実とは異なる内容のことが伝わる情報の非対称性がよく発生します。上位役職者は社内の情報を欲している場合が多いので、情報提供の役割を担うことで関係性を強化することができます。上司の上司とのコネクションを築いたら、誰も無視できなくなるのです。

尾藤克之
コラムニスト/経営コンサルタント。議員秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ)『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。
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