どうも新田です。本編に先立ち、熊本の地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、お亡くなりになられた皆様、遺されたご家族の皆様に謹んでお悔やみ申し上げます。
この週末にかけて、東京でも熊本への支援、あるいは現地入りしてのボランティアも増えてくると思うわけですが、「ここが稼ぎどころ」とばかりに、いそいそと潜入する不逞の輩もいるのが常なわけです。こういう時はネット上の現場レベルの話が早くて、「今、熊本で県外ナンバーの車を見かけたら注意 窃盗集団だ」みたいな警告ツイートが拡散しております(火元のアカウントはプチ炎上後に削除済み)。
一方で、東日本大震災の時の教訓として思い出したいのは、流言がいろいろと飛び交うこと。今回もネトウヨ界隈からは早くも「中国人や朝鮮人が盗みに大挙してくるぞ」的なニュアンスのコメントも散見されます。私も数年前、東北の被災地を訪れた際、現地の人から「震災直後に中国の窃盗団がやってきて荒らしまわっていた」みたいな話も聞きましたし、ネット上では東北の被害について「遺体の指が不自然に切られていたのは指輪を盗まれたから。やったのは外国人だ」的な凄まじい噂も見かけるんですが、実際のところ、警察当局は東北の火事場泥棒案件をどう見ていたんでしょうか?
警察庁の統計データ(出典:平成23年の犯罪情勢)を紐解くと、被災3県の窃盗犯の認知・検挙状況は「全体の傾向」としては、震災のあった2011年のほうが前年より減少だったそうです。もちろん個別に見ていくと悪質なものはあります。福島だけは空き巣と出店荒らしが有意に増加しておりましたが、これは原発事故の影響で住民不在が長期化した影響が出たものです。ATM荒らしの被害は、それなりにあって3県のコンビニATMは総額6億6,900万円の被害。ただ、その7割は福島で、やはり住民不在の影響を感じさせます。
大方、震災があると窃盗団やら強盗団やらの出現、あるいは女性への性的暴行が取りざたされますが、警察庁としての見立ては次のように冷静なのが意外です(太字は筆者)。
武装した犯罪グループによる略奪、性犯罪の多発等といった流言飛語が流布したが、特定の手口の窃盗を除き、いずれの罪種も前年同期に比べて減少している。強姦、強制わいせつについても、いずれも前年同期に比べて認知件数が減少し、震災に関連して発生したと思われる性的犯罪は数件にとどまっており、被災3県合計の検挙件数、検挙人員は、前年同期に比べそれぞれ減少しているが、検挙率は上昇している
まあ、もちろん、熊本は東北よりは大陸に近いので、“招かれざる訪日客”が物理的にはアクセスしやすく、行政、地域ぐるみでの警戒は引き続き必要でしょうが、東北の被災地の犯罪対策の教訓としては、窃盗犯や粗暴犯といった一課案件よりも、むしろ二課案件、つまり知能犯への留意が復興期間で中期的に注意事項かもしれません。
震災に便乗した詐欺事件については、平成 23 年中に 92 件認知し、このうち 62 件を検挙しており、このほか屋根の修繕や住宅電気設備の点検が必要であると称して高額な修理・点検代を請求したり、放射線の測定や除染等にかこつけて物品を販売しようとしたりした悪質商法事件についても 14事件を検挙しているところである。
先ほども東洋大の山田先生がアゴラで、同大が蓄積した東日本大震災の復興課題のデータを紹介されておりましたが、官公庁や大学、研究期間に蓄積された客観的なデータ、ファクトを生かし、冷静にかつ機動的に対応することが重要ではないかと思います。
こういう時は公人たる政治家こそ、そういうアプローチの規範となるべきなんですが、参院選東京選挙区に出馬する予定らしい、社民党の風変わりなおばさんが原発と被災地を脊髄反射的に結びつける言動を見ていますと、どうなんでしょうかね。
無駄に不安を煽り立てたり、地震対応でクソ忙しい九州電力にわざわざ電話をかけたりして“業務妨害”して、ここぞとばかりに選挙アピールのツイートしたりといった言動は、いやしくも公人を目指す人として相応しいのかどうか、まあ都民の皆さんにはリテラシーを磨きつつ、色々と考えていただければと思います。 こちらからは以上です。
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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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