テスラとトヨタの関係は、10年前のアップルとソニーの関係

東京の青山一丁目にテスラのショールームがあって、予約すれば誰でも試乗できます。乗ってみて初めて理解できることは、テスラのライバルはベンツやポルシェといった高級カーメーカーではなく、競争相手のいない完全なブルーオーシャン市場を作ろうとしていることです。

Nich Sakai氏のブログによれば、そのテスラが発表した新しいデザインのモデル3(写真)の予約が世界中で殺到しているそうです。2週間で40万台。日本では若者の車離れが、叫ばれていますが、テスラが売っているのは車ではなく、クリーンエネルギーでクールに生活するという「ライフスタイル」です。

2016年3月に、米国市場でテスラの現行のモデルXが3,990台売れたのに対し、トヨタのプリウスのプラグインハイブリッド車(PHV)は、わずか7台しか売れなかったという衝撃的な事実があります。同じエコカーなのにこれだけの差が付いたのは、技術ばかりにこだわりコンセプトやデザインよりもスペックを競う日本メーカーが消費者から支持されなくなっているからではないでしょうか。

テスラのイーロンマスク氏は、アメリカではWallという自宅設置型の蓄電池と太陽電池を車とセットにして、100%のエネルギー自給自足生活を提案しているそうです。車は単体で売っているのではなく、エコなライフスタイルを構成する要素の1つという位置づけです。

テスラの車のデザインは、決して突出しているとは思えません。伝統的な欧州の自動車メーカーの高級カーと比べると高級感には欠けていて、デザインもまだ物足りないところがあります。

しかし、ライフスタイルを売るというコンセプトが打ち出され、デザインも徐々に洗練されていけば、日本の自動車メーカーは競争相手にすらならなくなります。以前のスターバックスが、コーヒーを売っているのではなく、「サードプレイス(自宅とオフィスの間にある3つ目の場所)」を提供するというコンセプトで、それまでのコーヒーショップとは別世界の消費者からの圧倒的な支持を受けたのと似ています。

以前はポータブルに音楽を聞くための端末として圧倒的な地位にあったソニーのウォークマンが、アップルのiPhoneにシフトされてしまったように、トヨタの車がテスラの「クールな移動手段」にリプレイスされる可能性は決して低くないと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。