マクドナルドはもう自動販売機で売るしかない --- Nick Sakai

寄稿

ハンバーガーが売れない

日本マクドナルドホールディングスの2015年度決算は上場以来最悪の347億円の赤字。「マクドナルド 失敗の本質」著者の法政大学小川孔輔先生をはじめ、皆様の長期低迷の要因分析は概ね以下のようなものです。

経営もメニューも「輸入頼み」が裏目に出た。藤田田社長時代には「月見バーガー」や「てりやきマックバーガー」などヒットを出したが、2004年に原田泳幸社長が就任して以降は日本独自の商品展開がほぼ消えてグローバルメニュー一色になった。

原田社長はV字回復を演出するために、極端なフランチャイズ化を進め、日本独自のマクドナルドの強みだった「QSC+V」(美味おいしさ、良いサービス、店舗の清潔さ、値頃感)の理念が揺らいだ。

優秀なバイトがスタバ、ディズニーに奪われた。20年ほど前、学生の間で人気のバイトといえば、マクドナルドの「クルー」が1番だった 。10年前のトップは東京ディズニーランドの「キャスト」で、いまはスターバックスの「バリスタ」に変わっている。

実は私、若かりし頃、マクドナルド表参道で「クルー」としてハンバーガーを焼いておりました。今となっては黒歴史ですが、当時それは楽しかったものです。

もっと本質的な理由

そこで私は思うのです。マクドナルドは、高度資本主義経済の終焉とともに消え去る運命にあるのではないかと。「楽天・Amazonがテスラに駆逐される日」でも書いたのですが、産業革命以降の資本主義経済の高度化はそろそろ限界まで来ていて、次のステージに移行する。マクドナルドもその渦に引きずり込れています。東西冷戦が終わって、グローバリゼーションが進み世界は単一の市場となりました。そこでは、工業製品・飲食・アパレル何でも出来るだけ早く、広く、深くマーケットに訴求し、規模の経済で生産設備を拡大し、販売チャネルを築いたものが勝者となります。

その加速器になったのがIT革命と金融の自由化です。企画開発に優れた一部の企業が、世界に溢れるマネーを調達し、ICTのおかげで取引コストが下がった新興国で生産させ、ブランドを付けて世界中にばらまく。効率性・生産性 は極大化されていきました。世界中の金が高速回転し、世界集中管理システムの風船が限界まで膨れ上がったところに、いきなり異端児が現れます。UberやAir B&Bなどに象徴される、「所有」から「共有」へのシェアリング経済です。

シェアリングは金を生みません。むしろ経済を縮小させます。「所有欲求」というマルクスの資本論の前提をひっくり返します。断捨離・ミニマズム・自然主義・田舎暮らしなどのトレンドは皆、資本主義的には背徳です。シェアリング経済の要諦は「集中」から「分散」です。シェアするには、人間の地理空間に制約されます。今のトレンドはグローバルからローカルへです。

かつてのマクドナルドは、日本が貧しかった中で「先進国アメリカの風」を価値の源泉にしていました。彼らが売っていたのはハンバーガーではなくて、「アメリカの香りでありライフスタイル」でした。しか し、ここで肝心なのは、「アメリカの」ではなく「アメリカの」ということ、つまり藤田社長は日本人の心に響く巧妙なアレンジを施したのです。米国本社が第一号店を郊外のロードサイドにと主張したのですが、藤田社長は譲らず、銀座三越に開き、「マック=高級」というブランドを築いたという逸話は有名です。「スマイル0円」も日本の「おもてなし心」に由来する独自の仕掛け。

ところが、原田社長は、グローバル化を良しとする米国本社に迎合しそれらを悉く破壊した。これが決定的なターニングポイントでした。後を継いだサラカサノバ社長は悪い人には見えないけれど、外国人なので、どうしても「グローバリズムの象徴」というレッテルが張られてしまいます。だから、「 緑肉問題」の時の謝罪会見の仕方云々は表層的なものです。

挽回の秘策

ではどうすればマックは挽回可能なのか。今彼らには2つのオプションがあります。

1:今までの成功モデルをいったん全部捨てて、非効率でも日本化をすすめる。

または

2:グローバルモデルを維持し、さらに徹底した規格化・効率化をすすめ、価格競争力を高める。

そこで鍵を握るのが、米国マクドナルドの意向ですが、衝撃的なニュースをご紹介します。

米国アリゾナ州のフェニックスで、ロボットによる無人店を開く

ソース: imgur.com/FbJGNLi

アリゾナでは最低時給15ドル(1600円)でもバイトが集まらず、徹底した省力化の実験店舗ということです。こんなことをやってしまう米国本社ですから、恐らく日本も無人化など徹底的な合理化モデルを追求し続けるでしょう。

それならば私もOBクルーとして、提案をしましょう。それは、

実店舗は潰して、街角の自動販売機でビッグマックとポテトを売るしかない

です。これ、意外といけると思うんですよ。究極の合理化・省力化。土地代もかからないし、アメリカでは機械が売るんだから、日本流にアレンジすれば自動販売機でしょうと。

昔ありましたよね、場末のドライブインでうどんとハンバーガーとトーストの自動販売機。最近、「うどんの自動販売機地方で復活の兆し」というニュースを見ました。近所のリアル店舗のお母さんが丁寧に仕込んで、価格も安いので評判になって近所の人が食べにやってくるそうです。

でここでひと工夫。今はやりのIoTで価値訴求する。例えば、アプリで「今日も朝ご飯食べに きてくれてありがとう。明日は無料ね。」だとか、「焼きたてビッグマック、今から10分タイムセール」とか、「事前にスマホで注文して、それを自販機の端末にかざすと、品物出てきて、決済もできる」とかいう感じです。さらに、その自販機を、

セブンイレブンやローソンと提携して、コンビニの中に設置する

っていうのはどうでしょう。究極の合理化です。ATMがコンビニにあるんだから、マックもコンビニにあってもいいじゃない。というマリーアントワネット的発想です。イートインに力いれているコンビニ。昨日の敵は今日の友です。ドーナツなんか目じゃないキラーコンテンツになる。日本マクドナルドの企画の人、私を是非事業コンサルで雇ってください。OB「クルー」ですのでもっといいアイデアだしますよ!

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