「円高」よりもっと怖い「日本の財政破たん」

IMFの元チーフエコノミストで、影響力のある経済専門家として知られるオリビア・ブランシャール氏が、「5年から10年の間に、日本の財政が破綻し、高率のインフレが起こっても驚かない」とコメントしたことが、池田信夫氏のブログでも紹介されています。GW中は、円高(というよりドル安)に注目が集まっていますが、長い目で見て個人投資家が目を向けるべきは、こちらの方かもしれません。

良く知られていることですが、財政債務のGDP比のグラフでみると、日本の債務残高は先進国では突出しています。この日本の財政問題を解決する方法は、3つしかありません。

「歳入を増やす」「歳出を減らす」「インフレにする(なる)」です。

歳入を増やすには増税です。しかし、消費税の増税を躊躇している状態で、税収の増加は期待できません。法人税も世界的に低下傾向ですし、所得が増えなければ所得税も伸びません。税収の劇的な増加は可能性として低いと言えます。

歳出を減らすのは、歳入を増やすこと以上に難しいと言えます。高齢化に伴って社会保障費は今後さらに増えていきます。社会保障支出を削れば、シニア層の反発を招き、選挙で勝てなくなります。自然増だけでも、歳出は年々増えていく可能性が高いのです。

残る選択肢は3つ目しかありません。問題は、それがいつどんな形で顕在化するかです。

ブシャール氏は、それを「I would not be surprised if this were to happen sometime in the next five to ten years.」と具体的に、予想している訳です。

今までも日本の財政問題は、何度も市場のテーマにあげられてきましたが、国債は下落するところか、さらに上昇し、ついに長期金利までマイナスになってしまいました。マイナス金利の国債残高はグローバルに7兆ドルに激増していますが、その半分以上は日本の国債です。これは、日銀の量的緩和とマイナス金利政策の結果です。日銀は2月時点で市場の34.5%の日本国債を保有しており、このまま行けば2017年には50%に到達します。

このような異常な事態が、いつまでも続くのか。残念ながら、未来のことは誰にもわかりません。

しかし、自分の資産がどうなるか、シミュレーションしておくことには意味があるでしょう。財政再建が困難だと市場が判断すれば、国債は売られ、金利が上昇し、高率のインフレになることが予想されます。日銀や円に対しての信認が低下すれば、想定以上の円安になる可能性もあります。その時、最もダメージを受けるのは、預金だけで資産を保有している人、そしてシニアの年金生活者の人たちです。

だから円で借金をして、不動産のようなインフレ資産を保有しておく。円資産だけではなく、外貨資産も分散して保有する。長期的には円高よりも、もっと怖いリスクも忘れないようにしたいと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年5月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

 

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。