優しい「ゆとり世代」が切り開く新しい日本の繁栄

2016年は世界史上大きな転換の年です。拙稿「グローバル経済の終焉とシェア経済の行方」で述べたように、世界を情報とマネーが飛び交い、世界株式会社といってもいい分業体制に人々が歯車のように組み込まれたグローバル経済が崩れ始めていて、IoTとシェア経済を基盤とする第四次産業革命が起きようとしています。

今までのエントリーは、やや理論やテクノロジーに走りすぎたので、今回は、そこで主役となる人々の実像に迫りたいと思います。

米国IT企業の幹部から世界的ハンバーガーチェーンの業績をマネートリックで蘇らせ、通信添削業に転身され、圧倒的物量作戦で人々に訴求されるカリスマ経営者や、中国の安い労働力と日本流の品質管理力を組み合わせ、日本流のファストファッションモデル確立されたカリスマ経営者が今、元気がありません。売り上げが減っているのです。彼らは、グローバル経済の寵児であったので、その経済モデルの終焉とともに行き詰まることは必然です。

新しいパラダイムのシェア経済の基本原理は、分散と人々の自律です。そこでは、商才とともに世界の富を独占するカリスマ経営者と真逆で、名もなき多くのインテリジェントな人々が、行政に頼ったり、固定的価値観に流されること無く、自分で判断し、リスクを取り、コストを払い、暮らしを切り開いていきます。結果として、そういうイノベーターが社会変革、地方分権の旗手となります。明治維新の下級藩士のようなポジションですね。

現代の都会でもまだあった!?東京で電気代500円で過ごせる!昔を取り戻した家庭

Spotlightサイトから引用。一部抜粋(是非引用元で詳細をご覧下さい)

どこにでもあるようなごくごく平凡な幸せそうな四人家族。妻、サラリーマンの夫、長女そして長男がいる「アズマ家」。自然が多そうだけど、実はここは都心から電車で1時間半のところに位置する東京都あきる野市。

実はこのアズマ家、できるだけ電気を使わない昔ながらの生活をしている、どこよりもスゴい節約一家なんです。週末は、もっぱらこんなふうに家族で一緒に畑で過ごすことが多いという。

「東京のアズマ家には畑があり、たくさんの野菜たちが育ちます。こんな農業機械も使いこなす妻の奏子さん。ちょっと小腹が空いた子どもたちのために、育ったニラを収穫して「平焼き」を。」「ではこの「アズマ家」のみなさんは、いったいどんなところに住んでいるのでしょうか。自宅はなんと1960年ごろに建てられた木造2階建ての日本家屋だそう。土地代2400万円で購入した物件。電灯は、居間と台所そして風呂場だけというのも驚きです。」「そして何と言ってもびっくりしてしまうのが、このご時世で「アズマ家」の電気代は、夏場でも500円台におさまるんです。電化製品であふれているこの時代には、ありえない金額。この領収証だと400円台!」

 

うつ病患者が手を取り合ったら起業もできた。うつ病オンラインコミュニティ「U2plus」創業者 東藤泰宏さんの選んだ道

出典:Soar 

 

 

 

2016年04月20日(水) 坂口恭平 坂口恭平の熊本脱出記(1)あの日、東京で感じた「予兆」〜そして家族の待つ熊本へ「新政府」総理大臣が緊急特別寄稿!賢者の知恵

出典:現代ビジネス 是非引用元で詳細をご覧下さい

3.11後、東京を引き払い、故郷の熊本で活動を続けてきた坂口は、期せずして今回の熊本地震に遭遇することになった。そのとき何を見、何を考えたか。瞠目のリアルタイム・ドキュメント。全4回、一挙公開!

ここでご紹介した3人は、恐らくいわゆるゆとり世代です。(きちんと検証していないので間違っていたら謝ります。)2016年4月21日の現代ビジネスに掲載された後藤和智さんの「「ゆとり世代」学力低下はウソだった~大人たちの根拠なき差別に「ノー」を!」にあるように、ゆとり世代の学力やインテリジェンスは決して低くありません。ただ、彼らはそれまでの戦後日本人とあまりにも違うので、上の世代は彼らの生態を全く理解できず、異端児扱いし、いわれなき差別的言動を繰り返すのです。

しかし私は、彼らこそが、IoTシェア経済の下で日本の繁栄をもたらす旗手になるだろうと考えています。ゆとり世代は、高度成長やバブル経済を知りません、生まれたときにモノに囲まれており、さらに成長の加速度のベクトルがマイナスにあるという日本経済の閉塞感をデファクトとして生きていました。彼らは「おー、モーレツ」という言葉に象徴される、日本株式会社として、がむしゃらに働いて、自分も豊かになり、社会も豊かになるという、明治維新以来の日本人が共有してきた価値観を持ち合わせていません。

彼らは、日本社会や会社社会では「生命力が足りず、社会・組織的適合性がない」と指弾されますが、むしろ所有こそが善であるという物的豊かさを絶対正義とする固定観念を捨てられない大人達こそが、新しいエコシステムへの適合性がなく、生存競争から駆逐されると私は考えます。

この3人の共通点は「周りの目を気にせず、自分自身の生活スタイルを確立し、実践していること」です。

そして、その恐るべき所有欲求の低さです。東京の郊外、あきる野市のアズマさんは冷蔵庫も洗濯機も持っていません。熊本の坂口さんは、平気で、車を捨て、住居を捨てます。東藤さんは、自分がレゾンデートルを賭してスタートアップしたうつ病オンラインコミュニテイを簡単に譲渡してしまいます。

次に特筆すべきは、彼らは全てを捨てた訳ではなくて、常にインターネットを通じてバーチャルコミュニテイと繋がっています。外的世界と隔絶する禅僧との違いはここにあります。自分の所有物の断捨離はするが、社会の公共インフラは惜しげも無く使い、友達と繋がっています。

UberやAir B&Bに代表されるように、シェア経済は世界のトレンドでありますが、「水と空気と安全はただ」で「公共交通機関やインフラが全国隅々に行き渡っていて」「政治・経済・文化に関する価値観を国民がほぼ共有する」という、シェア経済への希有な適合性を日本は有しています。だから彼らこそが世界的ムーブメントの先駆者に成り得ます。

昔、ベトナム戦争に対するカウンターカルチャーとして、米国西海岸でヒッピーが誕生し、日本においても団塊の世代が60・70年代安保闘争や、「自然に帰れ」運動を始めます。しかし、彼らは文明の外に隔絶された理想郷を求めたので、自立できずに、大学の卒業とともに資本主義文明に歯車として帰っていったのですが、ゆとり世代は違います。彼らは、インターネットとか社会インフラとか先人が築き上げた文明の内側から、変革運動を起こしています。これはサステナブル(持続可能)だし、世界のトレンドがそれを後押しします。

テスラだ、電気自動車だ、スマートグリッドだ、シェアリングだ、道州制だと理念やテクノロジーをいくらシリコンバレーや東京の頭でっかちが並べ立てても、そういう社会を選択し、技術を使い、切り開いていくのは生身の人間です。ましてや、日本的雇用慣行に基づく会社・官僚組織のようなピラミッド社会ではなく、個人個人の自立と分散、ゆるやかな結合が基本テーゼのシェアエコノミーでは、上からの押しつけではなく、彼らの自主判断にゆだねるしかないのです。

そういう意味で、「ゆとり世代」が先人が築いた社会のハードウエアをそのままに、基盤OSだけを入れ替えるという第四の革命を主導してくれることを私は期待しています。

Nick Sakai  ブログ ツイッター