残留思念を読み取る能力を持つ仙石は、能力を活かしてお笑いコンビ“マイティーズ”として人気を博す。だが、その能力ゆえに神経をすり減らし、コンビ解散後は、マンションの管理人として引きこもり状態だった。相方の丸山もまたピン芸人として鳴かず飛ばずでクビ寸前。そんな丸山に、解散したマイティーズに、行方不明となったピアノ教師・沢村雪絵を探して欲しいという依頼が舞い込む。事務所の女社長はマイティーズ復活を目論んで、仙石に事件の捜査を手伝わせるよう丸山に命じるが…。
物や場所に残った人間の記憶や感情“残留思念”を読み取る能力を持つ男とその相棒が難事件に挑む「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」。この特殊能力に関しては韓国映画「サイコメトリー 残留思念」でも描かれていたが、本作の場合、どこかコミカルな演出だ。現代劇初挑戦となる狂言師の野村萬斎と、俳優としてのキャリアも順調な雨上がり決死隊の宮迫博之という、凸凹コンビの組み合わせが、それだけで笑いを誘うからだろう。
事件は、残留思念という能力なしにはなりたたない、少々強引な捜査で解決へと向かうのだが、その根底にあるのは切ない思い出。実際、こんな能力があればほとんどの難事件は解決できそうなのだが、そこには人間のあいまいな記憶というやっかいな代物が。記憶は自分の都合のいいように書き換えられるのだから、単純に読み取ればいいというワケではないのだ。改ざんされた過去の記憶をどう紐解いていくかが見所となっている。それにしても、萬斎と宮迫のコンビはいい味を出していた。野村萬斎は、正直、時代劇の方がフィットしていると思うが、このコンビには、次の難事件にも挑んでほしくなる。
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年5月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。