資産運用の「ベルリンの壁」はいつ崩壊するか?

早稲田大学、明治大学、そして丸の内朝大学の3つの「大学」で4つの講座が並行して開講されています。受講生は4クラス合わせて150名。アプローチはクラス毎に異なりますが、目標は「将来のお金の不安を自分で解決できるスキルを身につけること」です。

資産運用のオーソドックスな方法ということで、金融資産と実物資産の運用方法を基本的な商品選択方法から丁寧に説明しているのですが、今回もまた受講生のキャピタルゲイン志向よりもインカムゲイン志向が圧倒的に強いことに驚きました。

以前のセミナーで「60歳までに1億円手に入れる」のと「60歳から毎月50万円受け取る」という、2つの選択肢のどちらを選ぶか聞いてみるとほとんどの人は後者を選んでいました。

今回、「60歳までに1億円手に入れる」のと、20万円減らして「60歳から毎月30万円受け取る」。この2つの選択肢を提示すると、それでも多くの人は後者を選択したのです。

継続的にお金が入ってくる仕組みに対する圧倒的なニーズを感じました。

良く考えてみれば、1億円あれば、現金で利回り4%の国内不動産を購入して、年間400万円の家賃収入が得られます。都心の中古ワンルームマンションを複数購入すれば達成できる無理のない数字ですが、資産運用の知識や経験がなければ、そんな発想も勇気も湧いてこないのかもしれません。それに、不動産には将来の空室リスクや家賃の劣化リスクがあります。定期預金のような安定したインカムを確保したいというのは、マイナス金利になってさらに強まっているのだと思います。

現状の日本国内の金利体系では、金融商品を組み合わせて毎月30万円のキャッシュフローを作り出すには、1億円では足りません。REITの配当利回りが、3%強ありますが税引後では目標には到達しません。また上場している金融商品ですから、価格の変動は不動産より大きくなります。

このようなインカム志向が、講座を受講している人たちだけではなく、日本の個人投資家全体の傾向だとすると、今後インカムゲインを求める投資家がさらに金融資産から実物資産へシフトしていく可能性があります。それは、不動産の価格を押し上げ、利回りを低下させることにつながります。

金融資産と実物資産。今までは金融資産は銀行と証券会社。実物資産は不動産会社が取り扱っていて、別の世界が展開されていました。そんな2つを分断してきた「ベルリンの壁」が崩壊すれば、お金の流れが一気に変わる時がやってきます。いや、もうそれが始まっているのかもしれません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。