日産自動車、革新的な分散電力システムを英国で発売

酒井 直樹

ロンドンからツイッター経由でニュースが飛び込んできました。2016年5月10日、日産自動車は電気自動車リーフで使用済みとなったリチウムイオン電池を再利用して、家庭用蓄電池を使ったxStorage system(エックスストレージシステム)というエネルギーマネージメントシステムを発表しました。Eatonというイギリスの電機会社とタッグを組んだようです。

出典:MashAbleサイト

テスラは既にアメリカで同様のシステム、パワーウォールの発売を開始していますし、メルセデスベンツも同様の取り組みを進めています。これらのシステムでは家庭内に設置した太陽電池で発電した電気を一旦蓄電池に貯めておいて、夜電気自動車で帰宅した際に、蓄電池から車に充電をすることができます。また、送電網を通じて電力会社が販売する電気の価格が安いときに貯めておいて、逆に送電網で電気が不足したら、逆に電池から送電網に高い価格で売って、さやを稼ぐということもできると日産はプレゼンしたそうです。

当然のことながら、このシステムはスマートフォンで操作可能で、アプリを使えば簡単に電気の流れを操作できるそうです。xStorage system(エックスストレージシステム)は2016年9月発売予定で、価格は3200ポンド(約50万円)。中古のバッテリー(4.2kWh)を使っているので格安です。日産は10万システムの販売を目論んでいます。

日米欧のビッグな車会社が、本気で電気事業に乗り出すことは、全く新しいプレーヤーによって新しい事業モデルが構築することを意味し、既存の電力会社にとっては、大きな脅威です。集中から分散への流れの中で、もしかしたら、将来的には送電網自体が不要になってしまう世界もあり得ます。シェア経済・IoT革命の世界潮流がこしたムーブメントの背中を押します。

しかも、顧客に、「エコでクールな」新しいライフスタイルを提案し、価格以外での購買欲求をくすぐります。テスラのパワーウォールは白と銀を基調にAppleのiPhoneのようなスタイリッシュさで訴求していますが、日産は暖かみのある赤をベースカラーとして差別化しているようです。

実は、日産自動車は日本でも、リーフを家庭用電源に使えるというLEAF TO HOMEというコンセプトをやや控えめに紹介しています。未確認ですが、日産自動車は当初、日本でも、イギリスのように直接電気自動車の電池を送電網に直結して、電気の売り買いをするモデルを構築しようとしたフシがあります。しかし、法規制や電力会社との調整が上手くいかず、そのような破壊的革新モデルを実現していません。日本国内ではいろいろな配慮が働き、結局海外で仕掛けるということになったのでしょう。このインパクトの大きいニュースを日本のメディアがネットも含めて全く報じないのはそういうことなのでしょう。

その結果、こうした日本企業も参加してのイノベーションが日本では起きずに、欧州で展開するという流れになっています。

出典:日産ウエブサイト

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