エネルギー・交通・通信が融合する近未来の社会像

酒井 直樹

IoT革命とシェア経済が、交通電力供給のあり方を同時並行的に変え、さらには社会の成り立ちすらも変えていくだろうと私は予想します、世界の最先端企業が導くイノベーションの動向から、その延長線上にある近未来を予測してみたいと思います。

通信システムが自動運転や最適交通管制を可能にする一方、電力供給も通信システムによって、中央集権的な一方通行の流れから、隣人と共有・最適化し、さらに上位系統にバーチャル発電所として電力を供給するようになるでしょう。2020年に我が国で予定されている完全電力自由化は、価格シグナルによって、こうした水平的なネットワーク取引を活発化させるでしょう。

中国・韓国が引き起こすギガファクトリーの建設競争により、リチウムイオン電池の価格は、太陽電池が過去10年間そうであったように、つるべ落としに下がっていくでしょう。電池を介して、交通と電力供給が融合し、電力供給業と自動車製造業のあり方は大きく変わっていくでしょう。

その経済合理性もさることながら、温室効果ガスを出さない、「エコでクール」なライフスタイルを提案することで人々の感情に訴求してこうしたシステムは受け入れられていくでしょう。

電気自動車に搭載されるバッテリーは、個人の所有物でありながら、コミュニテイに安定・効率的な電力供給をもたらす公共財になるでしょう。

電気自動車もシェア経済の進展により個人の所有でありながら公共財の性質を帯びるようになるでしょう。Uberの進化系アプリケーションと自動運転システムの高度化によって、コミュニテイにおける効率的な運送手段になって行くでしょう。電動バスはBRTとなり、鉄道のダイアグラムも含めて、マイカーと公共交通機関の境目がなくなるでしょう。

今世界で急速なモータリゼーションの反省からMulti-Modal-Transportがトレンドになっています。公共交通機関先進国の日本は、韓国や欧米の追随を許さず、その完成度を磨き、インドネシア・ベトナム・インド・中国などの新興国にそのシステムを輸出するようになるでしょう。安倍政権はインフラ輸出で新幹線と超超臨界石炭火力発電ばかり押していますが、実はキラーコンテンツはここにあると、早晩気付くことになるでしょう。

マイカーは隣人も運ぶし、荷物も運ぶようになるでしょう。ヤマトや佐川、日本郵便の物流網との融合です。そこでは、通信システムとApplePayにみられる、簡便な決済システムが取引を誘導するでしょう。

こうしたシステムは人口密集地よりは郊外・地方の方が親和性が高いので、「エコでクール」なライフスタイルを求める人々の地方移住がすすむでしょう。

電気自動車は、こうした公共インフラへの組み込みによって、その航続距離の制約や充電時間の制約がマイナス要因にならずに、普及が進んでいくでしょう。

少子・高齢化が進展するなかで、財政赤字の制約を受ける日本においては、箱もの投資をよりも、スマートなコンパクトシテイが自然発生的に実現していくでしょう。結果的に公共支出の劇的な削減に寄与すると思われます。

「情けは人の為ならず」「お天道様がみている」といった、利他指向がもともと強い日本人です。こういったIoT革命やシェア経済の浸透によって、昭和の高度成長期から核家族化、独居化し孤独に陥っていったベクトルを方向転換させることで新しい同居、新しいコミュニテイの形成を導いていくでしょう。

フェースブックやツイッターで、バーチャルに緩く繋がっていった過去10年の進化系として、ご近所様が物理的にゆるくICT網で繋がっていくでしょう。ご近所さんのインターネットコミュニテイ形成を促すアプリが百花繚乱し、昔流でいうオフ会があちこちで定常化するでしょう。

そこでは、ご近所のちょっとした助け合いが価格シグナルアプリで生まれていき、公共・箱もの事業であった官主導の教育・育児・介護が、民の手でソフトに行われていき、既得権をもつ公務員の削減、箱もの公共投資、介護・健康・厚生年金、生活保護などの支出の見える化、民への移転によって、財政赤字を緩和する方向に働くでしょう。

安倍首相があれほどまでに望んだ構造改革、第三の矢です。構造改革は役所で頭をひねってポンチ絵を描いてごまかすことではなく、イノベーションによって自然発生的に民主導で達成されるものです。

日本の未来は大変明るいと私は思います。

Nick Sakai  ブログ ツイッター