忘れてはいけない「REITと実物不動産は別モノ」

5月23日の日本経済新聞朝刊によれば、いわゆる「毎月分配型投信」の株式投信全体に占める純資産の比率は先月は45%まで低下し、10年ぶりの低水準になったそうです。1997年にはじめて登場し2011年には株式投信に占める比率が7割近くまで上昇。現在でも純資産残高は約35兆円もあります。

今や外国債券や株式を投資先としている毎月分配型ファンドは、配当原資を金利や配当だけでは賄いきれず、特別分配金の形で元本を取り崩すようになっているケースも珍しくありません。投資家が、元本が削られていく仕組みを理解した上でこのような分配金を受け取っているのかは極めて疑問です。

満足できる分配金が受け取れなくなってきて、定期的なインカム収入が必要なシニア世代が向かっているのが、国内外の不動産への投資です。

同じ毎月分配型投信でも、海外の不動産で運用する投資信託は、今年1月から4月までの4か月だけで9千億円を超えて、過去最高の資金流入となっています。さらに、国内では何とあの三菱地所が投資用マンション事業に参入。東京の千代田区、港区、品川区などの都心部で今年の秋から7棟を開発する予定で、年間200~300戸供給されるようです。

マイナス金利の影響で、不動産市場に急にスポットが当たりはじめましたが、気を付けなければいけないのは、REITのような金融商品とワンルームマンションや1棟ものアパートのような実物資産は、同じ不動産でも別モノだということです。

国内の不動産に投資するREITは、配当利回りが3%台前半まで低下しているものもありますが、都心の中古ワンルームは管理費を差し引いても4%以上の利回りがあります。また現物不動産は借入を使って、90%以上をまかなうことができますが、金融商品には限界があります。さらに、相続税評価額が引き下げられるといった税法上のメリットは、実物資産にしかありません。

実物不動産には流動性が低い、物件にリスクが集中する、取引コストが高いといったデメリットがありますが、金融資産には無いメリットが多く存在します。

2つの投資対象を同じ不動産ということで同列に扱うのは、実際に投資をしたことの無い経験の無い人の発想です。

資産運用のパラダイムシフトが起こりつつある今、資産運用にも従来の「しがらみ」や「メンツ」に捉われない柔軟な発想が、将来の結果につながると思っています。

(写真は週末の女川で食べたBBQのホタテ。レア感が最高でした)

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年5月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。