【映画評】シマウマ

神竜夫は仲間たちと美人局(つつもたせ)で稼いでいたが、ヤクザを引っかけたことで、窮地に陥る。竜夫はアカという男に拉致されるが、アカは復讐を代行する回収屋だった。だがアカは竜夫に、依頼者のヤクザを殴り殺せば命を助けてやると提案。後には引けず、ヤクザを殺害した竜夫は、ドラという名前で代行屋となり、転がるように闇の世界に堕ちていく…。

小幡文生による人気コミックをバイオレンス描写満載で実写化したクライム・ムービー「シマウマ」。復讐の代行屋は、完全な裏社会の稼業だが、主人公の竜夫をそこに引きずり込む快楽殺人者のアカや、代行屋を取り仕切る謎の男シマウマなど、登場人物は一筋縄ではいかないヤツらばかりだ。暴力描写も、映画化にあたって限界ギリギリという感じで、情け容赦なく血肉が飛び散る。原作漫画はグロい拷問の連打で、「絶対に読んではいけない漫画」と呼ばれているというから、その過激さは想像できるだろう。回収屋は、暴力はふるうものの、殺人は行わず、代わりに、ターゲットに死ぬほどつらい思いをさせる“心の回収”、すなわち復讐を行い、依頼者の溜飲を下げるのが特徴だ。

詳細は明かさないが、ラスト、シマウマを超えるべく未来を見据えて歩き出すドラ(竜夫)の行く道は、外道が歩く闇の世界。それでも、これといった目的もなく悪さをくりかえすチンピラだった主人公が、回収屋となって根性を据えたことで、ある意味、生きる道を見出した“成長物語”に思えた。それにしても、さわやかさが売りだった俳優たちがこうまで真逆の役を演じるとは。繰り返すが、暴力描写満載なので、鑑賞には覚悟が必要である。

【50点】
(原題「シマウマ」)
(日本/橋本一監督/竜星涼、竜星涼、日南響子、他)
(バイオレンス度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。