誰でも簡単に適性検査(サーベイ)を作成する方法

私はコンサルティングのなかでもHR(人事系)を専門としている。採用実務、人事企画における制度設計、アセスメント開発が専門である。特にアセスメント開発においては、サーベイの作成やディメンション(インバスケットなど)などの実績は多い。

サーベイ作成に関しては、日本初のモバイル公式サイトEQ診断作成(インデックス)、日本初の結婚情報産業EQ診断作成(ZWEI)、世界最大のリスクマネジメント団体であるリスクマネジメント協会正会員講座(HCRM)EQ診断作成など公開できる実績も少なくない。

最近、採用実務におけるサーベイ開発のポイントを聞かれることが多くなった。策定するにあたり簡単な方法を提示しておきたい。

●設問の設計

まず設問の設計にはコツがある。「人間関係構築力」について測定したいとする。この時に「人間関係構築力の有無」について設問を用意することは適切ではない。例えば「あなたは人間関係構築力が高いですか?」などの設問である。人間関係構築力が高いと自負する人で高かったためしはないことや、このような聞き方では正しい測定が困難になってしまう。影響を及ぼす起因を聞かなくてはいけない。例えば次のとおりである。

1.人間関係のトラブルが発生したら共通の知人に相談するとよい
2.人間関係の問題解決は冷静に対応しなければいけない
3.身振り手振りを多く使うほうである

以上の設問について「そう思う、思う、思わない、全く思わない」の4段階で回答をさせて、すべて「そう思う」と回答する人は非凡な人間関係構築力があると考えられる。「3.身振り手振りを多く使うほうである」については意外に感じる人がいるかも知れないが、身振り手振り(ノンバーバル)と人間関係構築力の相関性は高い。同ケースに近い私の調査では0.8に近いスコアを得られるはずである。

また達成志向を知りたいとする。「あなたはやる気や意欲に満ちていますか」と設問を用意しても適切な結果は得られない。影響を及ぼす起因を聞かなくてはいけない。

1.あなたには人生の目標がある
2.結果を気にせずに行動にうつすことができる
3.自分にしかできないことをやってみたい

これも同様に「そう思う、思う、思わない、全く思わない」の4段階で回答をさせて、すべて「そう思う」と回答する人は達成志向が高いと想定できる。同ケースに近い私の調査では0.7程度のスコアを得られるはずである。

次に考えなくてはいけないのは設問に対する変数である。例えば前述の「人間関係構築力」と「達成志向」を比較した場合、達成志向は点数が高く出やすいという傾向がある。点数を100点満点とした場合、どちらも満点が100点では精緻とはいえない。この場合であれば、人間関係構築力は満点が100点、達成志向は90点というような差をつけることで精度を高めることが可能になる。

※本来はライスケールを用いることが必要だが、今回はライスケールの説明は省略する。また設問は記事用途に分かりやすく表現したものである。

●相関性の策定

あるサーベイが存在すると仮定する。100名が受験すれば100名分のパターンが抽出できる。そのなかでも変数の相関の強さを表したものを相関係数という。専門的な説明は省くが目安としてプラスでもマイナスでも、0.7以上のスコアになれば相関性が強いと判断することが可能である。

相関性は一般的にもよく使用されるが、これは「がんのリスク」と「肥満」の関係、「タバコの喫煙年数」と「肺がん」の関係ような、因果関係が明確になることに意味が近い。相関性が明確になれば、より精度が高められる。さらに設問を減らすことが可能になる。サーベイ受験の際に大きなストレスになるのが受験時間である。よって結果への影響が軽微な設問は減らしても構わない。

相関性を導き出す手法として主成分分析がある。多種類の説明変数があり目的変数がないときに指標となる定量データを作成し差異を導き出すものである。

説明変数=x1、x2、・・・ として新しい変数を定義する場合、第1主成分、第2主成分、第3主成分・・・nを規定する必要がある。主成分の個数は元の変数について寄与率と累積性を勘案しなくてはいけない。私はSPSSのプロマックス回転(バリマックス回転は因子負荷量が低くなり因子関係が曖昧になる)を使用する。なお、細かい説明はマクロミルのHPで詳しく説明がされているので参考になるだろう。

●有意性とサーベイの注意点

各社のサーベイの説明文を読むと「○万件のデータにより有意を導き出している」というような表記を目にすることがある。有意性を検定するにあたっては母数の多さは説得力のひとつになると考えられている。

有意とは統計学で「偶然とは考えにくい意味があること」を指す。「2つの母数を比較した結果、母数の間には有意差があるという結論が導かれた」。このような使い方をする。

しかし数百件のデータであっても有意性は導き出すことができる場合がある。母数やデータの多さは必須ではないことを知っておいたほうがよいだろう。

またデータが集まり精度が高まってくると様々な分析が可能になってくる。採用時のデータとその後の社内評価との比較などは人事戦略上非常に有効だろう。しかしこれは個人情報になるから取扱いには留意しなくてはいけない。適性検査の診断票は面接の際に紙ベースで印刷するのが一般的だが必ず回収しなくてはいけない。

最後にサーベイのもつ限界についても触れておきたい。サーベイは人の人格や性格を規定するものではない。あくまでも、ある条件下によって導き出された結果であることを忘れてはいけない。実態に近いものを照射していることを期待するがそうとはいえない。よって参考データ程度に留めなくてはいけない。なお本文内に専門的な用語の箇所があり読みにくかった点についてはご容赦いただきたく。

尾藤克之
コラムニスト

追伸

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